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幼女戦記Ⅱ・第10話

最高統帥府の活路としてのイルドア王国制圧計画を聞かされてクソすぎる国家運営に飽き飽きして来たデグレチャフ中佐。これはもう逃げるしかないのではないか。ただ、第二〇三魔導大隊とここまで苦楽を共にして来てしまってはデグレチャフ中佐単身での亡命は出来まい。特に協商国側はデグレチャフ中佐に煮え湯を飲まされているから、帝国の強力な戦力が自分のものになると言うただの計算より、感情の方が優先してしまうだろう。スー中尉しかり、ロリヤしかり。
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最高統帥府はイルドア王国制圧の実現性について軍部に問うた結果、レルゲン大佐がその見通しを出した。全てが都合よく運んだとしてもイルドア王国北部の制圧が限界。そしてそこを維持する為に南方軍を駐留させねばならない。東部の戦線に回すなど無理。ただ、イルドア王国の向背が信用出来ないからどのみち南部方面に軍を割いておかねばならない。多分イルドア王国は帝国の戦況が不利になったら協商国側につくだろう。ただ、軍を動かすのではなく、外交で来るだろう。

デグレチャフ中佐はレルゲン大佐に呼ばれた。外務省では参事官の交代があった。新しい参事官から軍の状況を聞きたいと呼ばれているらしい。最前線の意見としてデグレチャフ中佐をレルゲン大佐は選んだ。後で分かるが参謀本部と前線とでは意識の乖離が酷すぎた。デグレチャフ中佐は今回は遠慮無用で話してよいと言われた。

新しい外務省参事官はコンラート参事官と言う。大佐ごときでは役職が下になるのか。偉そうに座っていた。

ともあれ、椅子に座ってレルゲン大佐はこの新しい参事官との、最初の感触の探り合いとなる。分かるヤツか、頭の硬いヤツか。そしてデグレチャフ中佐を知らない。あれだけ帝国のプロパガンダに使われているのに知らないのはどうなんだ。銀翼突撃持ちと言うのにしか反応しなかった。

コンラート参事官、直球で聞いて来る。この戦争に勝てるか。レルゲン大佐はまだ本当のところを言い出しかねていたが、やはりデグレチャフ中佐を連れて来てよかった。デグレチャフ中佐はっきり答えた。無理!
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デグレチャフ中佐、歯に衣着せぬ勢いで答える。この状況で勝利をうたうなど詐欺師。理性ある軍人ならみなこう答えるだろう。流石に初対面で幼女にそう言われてもすぐには飲み込めないコンラート参事官だが、レルゲン大佐からの口添えで自分の頭が硬かったと理解した。ただ、根拠は欲しい。

帝国軍は協商国などを単独で叩く力はある。しかし連合王国も連邦も、そして多分参戦して来る合衆国相手に勝ち切るなど無理。

野戦帰りの軍人さんがここまで言えるとは、帝国軍の教育は大したものですなとコンラート参事官に言われたレルゲン大佐さん、教育などしてない、勝手にこうなったと(笑

では損切りしろと言うが、軍の感覚としてはどこまで損切り出来るのか。これの答えは難しい。何しろレルゲン大佐など「分かっている」軍人、ウーガ中佐など「もう持ちこたえられない」軍人、一方で今迄流した血を無償では受け入れられないヴァイス少佐も居る。だから戦略レベルの答えは出来ないと逃げようとしたら、今度はレルゲン大佐が敢えて言ってくれと言う。

ただ、それを聞いたコンラート参事官、こちら側も意見の統一はされていない。だから我々で既成事実を積み上げよう。レルゲン大佐としては前回その筈だったのに頓挫した。そのせいで次の作戦が発動されて今に至る。でもこれは外務省としても、前回失敗したせいで前の参事官は退任させられた。今度も同じ轍を踏むなら外務省の対面はもっと悪化すると省内で囁いてみせようと。

何としても出口を。そのためには屈辱的な譲歩も。

と言う事でレルゲン大佐が新たに作った軍の和平条件だが、参謀本部では散々に叩かれた。こんなもの受けいられる筈がないだろうと。レルゲン大佐、ここまで言われるかと思ったかもしれないが、ルーデルドルフ中将が発言した。

以前より悪くなっている。
あの時に飲んでいれば、それで済んだかもしれないのに、ここに来てまた譲歩出来ないと言って先延ばしにするのか。その結果がどうなるか分かるだろうと。

こうして出て来た和平条件。
賠償放棄、事実上の白紙講和。
コンラート参事官としてもこれが現時点で帝国が出せる最大の譲歩だと認めた。逆に軍はこれで納得したのかと。ただ、ここでコンラート参事官はフラグを立てていた、知らずに。譲歩が譲歩だと受け取られない事もある。

この条件を飲ませる為に帝国軍は東部でゼートゥーア中将の作戦で連邦に大きな打撃を与えられた。一方で西部の連合王国への作戦は頓挫した。

完全に力を見せられた訳ではないが、これだけ示したら相手も対話の席につくだろうと帝国は願った。

そこでレルゲン大佐がイルドア王国のカランドロ大佐の所に今回も赴く。和平工作を頼みに。今回は軍も最高統帥府も納得づくだ。これで和平がなる、そう希望に溢れて向かった。向かったのだが。
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駅で出迎えたのが当のカランドロ大佐でないのがちょっと気がかりだった。そしてテラス席で帝国の和平条件を示す。

カランドロ大佐、その条件を聞いて「賠償なしでですか?」。
あれ、この言葉づかい、おかしいぞ。レルゲン大佐がそれで帝国が受け入れると言うと、カランドロ大佐が驚愕した。受け入れる?帝国が?

カランドロ大佐「貴国が賠償を払う意志が無いのですね?」
レルゲン大佐の目が泳いだ。ああ、これは駄目だ。もう駄目だ。

先に戦端を開いたのは誰かとか、そう言う話では無理だ。帝国は賠償もせず領土の割譲も無い?それでは和平どころか「挑発」になってしまう。ああ、コンラート参事官が言っていた言葉がここで思い出される。譲歩が譲歩だと受け取られない。もうそう言う事態なのだ。

「見ている世界が違いすぎる」

カランドロ大佐、正直に話してくれる。帝国は強すぎる。強すぎる相手には滅んで貰いたい。それが交戦国の気持ちなのだと。

これを聞いたレルゲン大佐の帰路は往路とは打って変わって。
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そして参謀本部からデグレチャフ中佐達に封緘書類が到着。
外交に活路無し。
デグレチャフ中佐さん、あなたなら知ってるでしょう。第一次世界大戦でドイツが降伏するきっかけの一撃を。

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