これ描いて死ね・第3話
漫画同好会を設立するには三名の生徒が必要です。多分三人目は絵描きの彼女だよねとは思いつつ、安海には未だその考えがなくて三人目がポコ太。当然駄目だけど。あと部室の場所も自分で書くのか。現時点で部室棟は埋まっている。だから空き教室があれば。あるのかどうかは教師が知ってるのでは?ともあれ既存の部室を持ってる部活と相談して同居を認めて貰えるかどうかは生徒のお仕事。
と言う事でどんな活動してるかを知って貰う為には安海が描いた漫画をコピーして見て貰う事にした。
あー。これはもう老人にしか分からないけどコピー機が普通には無かった時代に富士ゼロックスが一般市場にコピー機を出して来た。当時はコピーの事をゼロックスと呼ぶ程に代名詞になっていた。多分後期高齢者に聞いたらゼロックスで通じると思う。
私が鉛筆やボールペンで漫画を描いていた時、絵の巧拙は置いておいてマンガ本に載ってるのとどうしても雰囲気が違うと思っていた。そこにゼロックス登場。あれでコピーをすると描いた絵の黒い部分が均質な状態になってマンガ本の雰囲気に近づく。あれは感動したものだった。でも当時のゼロックス、1枚コピーするだけで途方もなく高かったからお試しが出来た程度。それをここで安海は易々とコピー出来ちゃうんだ。
持って行った先の華道部と物理部と落語研究会ではクスクスと笑われた。うーん、漫画は或る意味では笑われるとそれはそれで意味があるのだが、この笑いは「なんだこれ」な笑いなんだろうな。
でも笑われるのと部室を共用させて貰うのは別の話ではなかったのか。駄目な事になっちゃったけど。
さてここで、だったら美術部とか?で、美術部にはあの子が居るのでは?と思ったらその通りだった。藤森が一人で絵を描いていた....あれ?一人?美術部は一人で成立してるの?よくある部員が減って廃部寸前状態?
藤森は安海の漫画を見て惹き込まれた。特に仲間になる、な部分に。
実は藤森は漫画が好きだった。好きだった....けど作中で読んでいたのは諸星大二郎さんなんだけど、この安海の作風もOKなんだろうか。藤森は心の中で色々言いたかったけど全然言葉にならない。
部室のアテは全滅だったので例の貸本屋へ。そこには手島が居た。部室探しは全滅、自分の漫画見せたけど笑い飛ばされてしまった、自分の漫画が下手すぎて。それを聞いた手島が猛然と反対する。そんな事はない。巧拙とは別に作者の訴える力が効いてくる。
その典型が小林よしのり氏の東大一直線だと思う。高校時代にあれがジャンプに連載開始した時に「なんだこの絵は」と思った。後年のちゃんと整った形とは全然違う、まさに安海がペンで描いた様な感じだったのだ。でも面白い。そしてその結果は東大一直線がどうなったかをみんなご存知のとおり。
さて何故寺島が貸本屋に居たかと言うと、手島と寺村が昔馴染と言うのは別にして貸本屋の二階を部室として使わせて貰えないか話に行ったのだ。寺村のOKが出て、校長のOKも出て部室は確保された。でも藤森が美術室使って良いよと言い出せる前に決まった。次は自分が安海の漫画を作画したのを見せたい。今度はちゃんと見せなくちゃ。
仲間になる!
貸本屋の二階は完全に倉庫。一応クーラーはある。手島がやって来て人数も揃ったし漫研の活動は来週からOK。その前に言っておきたい事がある。学生の本分は勉強。まあこれはよく分かる。プロは目指すな趣味の範囲で。おやこれはどうかな。「これ描いて死ね」などと漫画に命をかけない事。あ、タイトルが回収されたぞ。ここで出て来るって事はそれは手島の言葉なのか。
なぜその言葉が出たか。Bパートは手島の過去。就職を目前にして漫画に走った手島が小学館の編集に漫画を持ち込んで、編集の金剛寺華に次から次へと描いたものを見せた。ただ、手島はずっと自分の描きたいものを採掘してる状態で何をと言うのが相変わらず決まっていない。
テーマなんてない。読んで貰いたいだけ。じゃあ同人でもとコミティアに参加した。コミティアはコミックマーケット以上に「その人が何を描いてるのか」が知られてないと本が出ないよね。それはやってみないと分からないけど、定番に漏れずに手島は山積みの本を前にして閑古鳥状態だった。隣のサークルはあんなに人が並んでいるのに。
て、並んでいる人がサークルの人の名前を呼んで初めて知る。それは手島が憧れていたへびちか。思わず固くなりつつも自分の本を進呈。それをパラパラと眺めるへびちかの目がプロの目に。そして最後に言うのだ。手島に足りないのは殺意。え?ナニソレ。
先が見えないまま手島は大学を卒業。弟は就職が内定したらしい。家族は優しい言葉をかけてくれていると思ったけど手島は聞いてしまう。零はどうしてああなってしまったのか。応援してくれるのは家族だけだと思っていたのに。それすらも。
そしてここで殺意を持って描く。テーマを決めて、方向性を決める。これ描いて死ね。
これが小学館の新人コミック大賞佳作を取るのだ。
死ぬつもりで描いたけど佳作かよと思った手島ではあったけど、編集は理解者だった。この先、一緒にやって行きましょうと手を伸ばす。この金剛寺さんが居なかったら手島は漫画家になれなかったな。多分最初の最初で早々と諦めていたのでは。そして☆野0先生が居なければ安海が漫画を描きたいなんて思わなかったろう。

