天幕のジャードゥーガル・第5話
シタラはソルコクタニから自分の密偵になって欲しいと言われる。その理由は今のモンゴルの権力構造の不安定さにある。チンギス・ハーンが生きていた頃はトルイがオッチギンとして軍勢を把握していた。軍を把握しているのは今も変わりない。有力者達が自分達の推すチンギス・ハーンの子息をカアンにさせたいと思うのはどうしても抑えきれまい。今は仲の良い兄弟だが兄弟の絆は脆いものだ。
ソルコクタニがどう心配しているのか、果たして心配なのかは分からないが意図は分かる。では密偵とはどこでどうすればよいのか。
ソルコクタニはシタラにチャガタイの所に入り込んで欲しいと言う。オゴタイ・カアンと仲の良いチャガタイがどう動くのかを見て欲しい。
ではどうやってチャガタイの中に入るのか。それは明日、旗の立っているテントの所へ行けば良いと言う。言われたとおりに旗の立っているテントの所へやって来た。でもこれからどうするのかとシタラが思っていた所に来たのがシラだった。
この旗の立っているテントはいわば遺失物係。これだけの大規模な所だと奴隷が自分の主の場所を見失って迷子になる事はままある。だからシタラはチャガタイの奴隷だと言う事にして、チャガタイの所へ返して貰う形になれば入り込める。え、そんな容易く?
ともあれシラの手引きで遺失物係へ。だがシラの紹介が杜撰だったのでシタラが怒って文句をつけたらそのはずみであのしめた羊の腸の中から出て来た塊がこぼれた。それを目ざとく見つけた遺失物係。この地ではそれをジャダ石と言って雨乞いをするのに使う。奴隷が持っていて良いものではない。
迷子の集まっている天幕に入ったら沢山の迷子が居た。その中にペルシャから来たのではと思われる二人が居たので話をするが、懐かしい話をしたものの、この二人はもうモンゴルの生活に馴染んでいた。シタラもちょっとそう思ったが、すぐに我に返った。モンゴル軍に蹂躙されたあの記憶を忘れる訳にはいかない。
そう思っていた所で遺失物係がシタラを呼んだ。おまえはジャダ石を持ってるらしいなとジャダ石を見せたら馬に乗せられ、しかもこの盗人めと言われた。なんだこの冤罪。
彼は連れて行った天幕に入る時にカダクと名乗った。中に入ると以前見た事のある身分の高い女性。おまえが私からジャダ石を盗んだのか。当然全く見に覚えの無い事で、そもそもあなたを知らないと言うと、カダクがこの方はオゴタイ・カアンの第6妃ドレゲネだと言う。
オゴタイ・カアンの妃に罪人扱いされてはただでは済まない。自分が持ってる石を見せたら違うと分かって貰えるだろうか。いや、石の形なんて覚えてないかもしれない。これこそ自分のジャダ石だと言われたらもう打ち首かもしれない。それでももうここまで来たら見せるしかない。覚悟を決めてシタラは石を見せた。
するとドレゲネはあっさりとこれは自分のとは違うと言うのだ。まあ大事にしてたら覚えてるかもしれない。あっさり無罪放免。カダクはもう用は無いと言うので大声で嘆いたら、カダクは仕方ないと泊める場所を案内してやると連れて行く。
しかしその道すがら灯りが見えたのでシタラが近寄ってみたら、そこにはオゴタイ・カアンとチャガタイ。こっそり見ていようと思ったのにうっかり音を立ててしまったので怪しいヤツだと捕まった。見つけたのはオゴタイの第4妃のモゲと第3妃のキルギスタニ。って、第3妃が一番幼い様子じゃん。部族の政略結婚かな。
何事かとオゴタイがやって来る。まずは話を聞こうか。君は誰だ。まさか隣にチャガタイが居るからチャガタイの奴隷とは言えない。答えに詰まったシタラはドレゲネが主人だと答えたのだが、そこにはさっきのカダクが連れて来たドレゲネがやって来ていた。こいつ何を言ってるのかと睨むドレゲネ。
チャガタイがシタラがウロウロしてるのを叱る。法を守れ。守らないと身の上が危なくなる。これ、後からオゴタイ・カアンが言うから分かるけどただ罵倒してる訳ではなくて、迂闊な事をすると命を落とす事になるからちゃんと法を守れ(そうしたら守ってやる)と言う意味だったんだ。でもこの場のシタラにはそれは分からない。
イスラム教徒が勝手するなと言われたと思ったシタラはチャガタイに対して、どうせあなた様には分からないでしょうと。それを見たドレゲネが動く。
ドレゲネが来てしまってはバレてしまう。そう思ったのにドレゲネはシタラを自分の奴隷だと言うのだ。大カアンを殺す為に送り出した。なーんだそうか、って納得するのか。
ドレゲネの天幕に連れて行かれたシタラ、ドレゲネからモンゴルが憎いかと聞かれた。
時間が経っても許せないシタラを招き入れたのだ。

