瑠璃の宝石・第12話
祭囃子が聞こえた。母は周防神社の祭だろうと言う。瑠璃が小さい頃におじいさんに連れられて、御神体の石に登って困らせたと言うのだ。まさかこれ伏線要素だったとは。
ところで瑠璃が高一だとすると16歳程。人間の一世代は大体が30年だからおじいさんは65歳ちょっととなる。あれ?私と同年代じゃん。生きてるのかな。そのおじいさん、嘗ては色々石とか拾っていたと聞いて瑠璃は物置に何かお宝が無いかと探したら、何か箱を見つけた。
あ、鉱石ラジオじゃん。
確かに私の世代では好きな人が居た。私は工作派じゃないから名前しか聞いた事が無かったけど。
でも瑠璃達には分からなかった。おじいさんが生きてたら電話して聞いてみるのでは。それをしてないって事は....あとで曜子がこれって戦後に作ったのかなと言うので、おじいさんはもっとずっと年上か。
葵が無造作に蓋を持つからもげて壊れた。やはりこう言うのは凪だと聞きに行くと、流石に鉱物系だからか鉱石ラジオを知っていた。
鉱石ラジオに電池は不要です。そう言えばそう言う話もチラと聞いた。電源の無い場所で聞ける。原理は掴んだ電波を地上にアースする事で電流が流れる仕組み。そっか、アースするのか。しかし掴んだだけではただの電流なので検波回路で電流の波を片側だけにして音として聞こえる様にする。しかしながらこんな微弱な電流だから普通のスピーカーやイヤホンでは聞けず、クリスタルイヤホンを使う。あー知らんかった。確かにあの形のイヤホンは見た様な気がするが、仕組みが違ったのか。
ところでこの鉱石ラジオ、かなり劣化してるから作り直さないと駄目だろう。よし、やって見ようと言う凪だけど来週迄にまとめないといけない研究資料があった。以前もチラと出たけど、凪のメインはやはりマンガン鉱床?私の友人が地質鉱物学科の卒論でマンガン鉱山やったとか聞いたけど。
曜子も忙しいので部品リストだけ貰って来た。どうしよう。メモにガンバレとあったのを見た瑠璃は硝子と二人で作り直そうとする。しかし高一で「抵抗」を知らんのはいかがなものか。これに葵も参加。
次に鉱石ラジオの本を読んでみる。いや、今ならネット見た方が良いのでは。場合によっては動画も上がってるだろう。こう言う物の仕組みについては動画は実物を多角的に見る事が出来るから優秀だと思うんだ。
ともあれそれらしい形にはなった。検波回路には最初に入っていた石をつなげた。完成したので葵がアンテナを掲げて音が聞こえるか瑠璃と硝子が試したが、全然何も入らない。
こう言う時は正解から逆算するのが良い。最初に入っていた石はペグマタイトだった。凪曰くこれだと検波器には使えない。これは花崗岩だから成分が必ずしも合致しない。でもペグマタイトは町の神社にあった筈。ここでまたも神社登場。
検波器に使うなら方鉛鉱が良かろうと言う。確かにそれと同じで小さいのも入っていた。
おじいさん、多分うまく行かなくて物置に放置したのではと言う瑠璃だけど、硝子があの鉱石ラジオと一緒に入っていたカードを取り出す。ベリフィケーションカード。それはラジオ放送が聞けた証拠になる。だからちゃんと使えていたんだ。
鉱石を色々試したらかすかに何か聞こえるみたい。行けるかもしれない。そこで曜子がくれたゲルマニウムダイオードを使ってみよう。これは半導体なのでちゃんと出来ていれば音が拾える筈。これで試したら聞こえた。これで全体構造は間違っていないのが分かった。あとは本当に鉱石で復元したい。
最初に入っていたペグマタイトで聞いてみたい。確か凪が神社にあったとか言ってた。そして箱には「SUOH」とある。冒頭で登場した周防神社か。そして瑠璃が御神体の石に登ったと言うのがペグマタイトかな。
と言う事で周防神社に言ったら年を取った神主が出て来た。鉱石ラジオの話をしたら神主は何か気付いたらしい。それなら奥の御神体の前が良く聞こえる筈。御神体の前には巨岩が。瑠璃はこれに登ったんだ。早速これを使ってみよう。て言うか近くに居るだけで良いの?実際に繋げてるのは小さいやつだよね。
そして聞こえた。
「朕深ク世界ノ大勢ト帝國トノ現状ヲ鑑ミ....」(違う。鉱石ラジオだからって過去の電波拾わない。

