夏目友人帳 漆・第10話
三春家の罠に嵌まった名取と的場。名取は息が苦しくなって窒息する術でもかけられているのではと言うが、的場が平然として三春家がかけた術式など見つけられれば簡単に解けると言って探し始めた。おや?変な模様がと思ったけどあれが術式か。
そうするうちに術の場所が分かる。名取に紙落としの解呪は出来るかと言う。その息苦しい呪も隙のある人間にかかる呪だから解いてしまえば問題ない。煽るな的場。それを言われたら名取もやらざるを得ないだろう。
一方、夏目も三春家の罠にかかって落下していた。でもあの一つ目の妖怪がクッションになってる。気がついた一つ目は早く邪魔しないとと動き出すが、夏目は何故そんなに邪魔したいのかと、抱きついて止める。お、夏目、思い切った事をしたな妖に抱きつくとか。
聞いてくれるのかと一つ目が言うので、聞いてやると答える夏目。夏目はそう言うヤツだ。躊躇いなく妖の話を聞こうとする。
一つ目は正清を知ってるかと言う。誰だそれ。一つ目によると無情で無慈悲な三春の祓い屋だと言う。昔、一つ目は山向の屋敷の小さい小屋にひっそりと住んでいた。ところがある日その屋敷の蔵に大きな妖が住み着いて、災いを振りまく妖も一緒に住み着いて、屋敷の人は困り果てていた。一つ目もその大きな妖が怖かった。屋敷の人間は色々祓い屋を呼んだが誰も大きな妖を祓えなかった。
そこでやって来たのが三春正清だ。大きな妖にくっついていた小者妖は無情で無慈悲な三春の祓い屋が来たぞと逃げ惑った。一つ目は怖くて隠れていた。一方、大きな妖は高を括っていたものの、正清にかかると一撃で祓われてしまう。
大きな妖にくっついていた小者妖も次々と祓われる。恐ろしくて小屋の中で震えていたところを正清に見つかる。ところが正清は一つ目を見逃すのだ。おまえの様な弱いモノに用は無い。
見逃された恩を返さねばならない。一つ目はそれ以降、正清に恩返しをする為につきまとった。これでどうして三春家を無くそうとするのか。それは次の説明で分かる。いつもは厳しい顔をしてる正清がその日だけは池を前にして涙し、そして言った。
「ああ、三春の家など無くなれば良いのに」
それかよ!
だから三春の家を壊そうとしたものの、うまく行かない。あの三柱に守られているから。だったら三柱を怒らせれば良い。それでお迎えの儀式の邪魔をしようとしていたのだ。
止めようとした夏目に一つ目が怒る。これを柊が止めて、ここから鬼ごっこ。一つ目が儀式の妨害をしない様にせねばと。
その頃、もうお迎えの儀式が始まっていた。三柱様は入って来て、柱の間に案内されて行く。それを一つ目が狙っている。邪魔させてはいけない。夏目が飛びかかって止めようとした。これ、夏目が頭の袋が取れて三柱様が怒る展開?と思ったが違った。
名取が一つ目を下がらせる。
三柱様が柱の間に入って儀式が始まる。名取と夏目は柱の間の前で一つ目が近寄れない様に陣をはる。果たせるかな一つ目は近づいたものの、それ以上近寄れない。もう三春家の者、正清も絶えたと説明しても一つ目は納得しない。だって家はここにあるではないか。
そう言って無理に陣に近づく一つ目を夏目が身体をはって止める。
その頃、三柱様はボウボウ頭巾になっていた。かなりの脅威だが的場は一向に動じない。そして酒を勧める。これでボウボウ頭巾は家を守ってやるぞと納得する。儀式は終わった。
それを察知した一つ目、終わってしまったと止まるが、これで夏目が力を使い果たして倒れてしまった。その中で一つ目の過去の記憶を夏目は見る。恩を返すと言う一つ目に正清は自由にしろ勝手に生きろと言う。なればと一つ目は目立たぬ様に影から見ていた。
そして見たのだ。正清におそらく好きな女性が出来て、お互い好き合っていたかもしれないのに、正清は別れの手紙を出す。そう、三春家の縛りに彼女を巻き込みたくなかったから。それでその女性とは別れたものの、あの言葉がここで出る。
「ああ、三春の家など無くなれば良いのに」
そう言う正清の涙の言葉だったのか。
やっと一つ目は三春家が正清が無くなったのを知る。もう恩返しは出来ない。
夏目はその一つ目に正清からどこへなりとも行くが良い好きに生きればよと言われただろうと言ってやる。
儀式が済んであの池の畔にただずむ的場に正清を重ねて見る夏目。的場も家業のせいで誰かと約束が結べないのか。夏目、元気出せと的場に枇杷を渡す。夏目からの意外な枇杷に的場の口が軽くなったか、過去の枇杷の話をした。
それは嘗て依島の家の枇杷を名取と見上げていた時、当時の依島の当主が枇杷をくれた。多分彼は名取にあげようとしたのだろうが、一緒に居た自分にもくれた。だったのに、肝心の名取に渡した枇杷はあまり美味しくなく的場のは美味しかった。あ、名取が最初に食べた枇杷がって、これの事か。ことほどさように物事はなかなかうまく回らない。
三春の家もそうだった。最初は家を守りたいだけだったのにあんな妖が守り手になってしまった。そして滅んでしまった。