夏目友人帳 漆・第7話
多軌透、確かに夏目では数少ない女子生徒として一人居たのは記憶している。でもどんな子だったっけ。他の女子からは可愛い子だよね、でも先日イケメンとフレンチの店に行ってるのを見かけたと噂されていた。
夏目の回想だと多軌にはいつも話を聞いて貰ってばかりで、今度は自分が何かをしてやりたいと言うものだ。そこにニャンコ先生出現。エクレア食べてる。自分で買える筈が無いので誰に貰ったかと聞いたら、あの多軌だ。すぐそこに居る。何かに悩んだ顔をしていると言う。
悩んだ顔と言うか、完全に悩んでるポーズ。
と言う事で夏目は何かに困ってるのではないか、話してくれと言うと、多軌は兄が帰って来たと言うのだ。6歳上の兄がここからは離れた大学に行っている。だから普段は居ない。その兄は極めて現実主義者で多軌の祖父や多軌自身とはあまり反りが合わないから滅多に家に帰る事がなかったのに二日前に突然帰って来た。
その理由も分からないが、帰って来たくせに家に30分も居ないですぐに外に出てしまう。何しに帰って来たのか、何が気に食わないのか。
多軌が夕食とか作ろうかと言っても外で食べようと毎日外で食べる。ああ、イケメンとフレンチってその事か。悪く考えてしまうと多軌の料理を食べたくないのか。色々考えてしまう。
多軌が聞けないのなら夏目に聞かせればよいとニャンコ先生が言うので、多軌が困っているのであればと夏目が行ってみる事にした。歩きながら多軌が兄の雰囲気を話すのだが、夏目が想像してるキャラではイケメンとフレンチしてたと言う噂話と合わないぞ。
行ってみたら兄は居なかったが、あとから帰って来た。かわいい系(笑
多軌透からは困った時に相談してくれた大事な友人と紹介されたので、多軌兄勇は夏目に警戒心は抱かなかったみたいだが、しかしそっと夏目に聞いてみるのだ。この家に入った事あるか?(何ともないのかみたいな感じ)。
多軌家に何か取り憑いた?と思ったが、そっちではなかった。
ただ、中に入ってエクレアを食べても何かムスっとしてる勇。透はそれを気にしてる。ここで夏目がいきなり不躾な質問。何故帰って来たのか。いや、他人からそれは普通は聞かれない質問。それでも勇が何か言いそうだったのにまた外に出た。
それを追って夏目が行く。多軌は大切な友人でその多軌が兄を心配してるから来たと顔を上げたら勇の背後にチラと妖の影。すぐに消えたけど。なのでどこかおかしな場所に行かなかったかと聞く。
この問いに勇が答えてくれた。郷土史研究をやっているのであちこちに行っている。何故それをやっているのかと言うと、透が話してくれた理由からだった。彼は妖怪の類を信じていない。だからそんな話がある場所に行ってそれがただの噂話であるのを証明してると言う。
透の事を心配してくれる夏目に、勇はそんな夏目に手伝って欲しい事があるので明日また来てくれと言う。
それじゃと思って透と一緒に帰ろうと校門で待っていた夏目だが、透がもっと酷い有様になっている。と言うのも勇が家の外でキャンプを始めたからだ。そんなに家に居るのが嫌なのか。でもだったら大学に戻れば良いのでそう言う訳ではなかろう。やはり家に何かあるのか。
テントの中で三人で話をすると、勇が言うには大学で自分の荷物整理をしていたら子供の頃の日記帳を見つけたと言う。何故そんなものを大学に持ち込んでるのかと言うのは置いておいて、そこから鍵が出て来た。何か大切な鍵と思うが思い出せない。だから家に帰ってどこの鍵なのかを見つけようとしている。
ところが家に入ると具合が悪くなり、長い時間居られない。
ニャンコ先生の見立てでは勇に何かが取り憑いていて、一方であの家には多軌祖父が張り巡らした結界などがあり、それがその妖に影響して取り憑かれた勇も同時に具合が悪くなっている。
じゃあそれを祓ったら?ニャンコ先生によるとあれで結構大物の妖らしい。一方で悪さはしないみたいだから自然と離れるのを待った方が良いだろう。それだと勇は家に居られない。と言う事でニャンコ先生みたいな超大物がくっついていればその妖の影響を受けないだろうと近づいたら、透と同じ血筋で勇もニャンコ先生大好き人間だった。
随分探し回ったが、見つからない。でも勇はニャンコ先生のおかげで具合が悪くならない。
そんな時に勇に取り憑いている妖が出現。そこで夏目は聞いてみた。鍵がどこの物か分かるか?分からない。じゃあ勇から離れてくれないか?離れられない。今は。その詫びに警告をしよう。鳳凰の書棚、人の子、下敷き。
それ、透に危険が迫っていると言う事ではないか。急ぎ夏目達は透の所へ急行した。蔵の中で透がその本棚の近くで探していたら書棚が倒れて来る。すんでのところで斑が棚を支えてくれた。振り返って考えてみるとあの妖は予知が出来る訳で、確かに大物だ。
この書棚だ。勇は動かすから手伝ってくれと言うが、非力な私の経験則では三人でもこれだけの本が入っていると動かないので、本をどけてからの方が良いのでは。ともかく三人の力で(あ、斑にやらせれば良かったのでは)本棚が動いて後ろに扉が見えた。
これの鍵だったのだ。鍵を開けてみたら中には菜色された石が。全てを思い出した勇、これは透が生まれる前に祖父の話で花の模様のある石は縁起が良いから探そうと川原に行ったものの、見つからない。だから石を拾ってそれに彩色した。ところが透が生まれた時のドタバタと祖父の体調が悪くなったのとですっかり渡すのを忘れてしまっていたのだ。
それを透は喜んでくれる。
二人になった所で勇は夏目に感謝して、そして君になら透を任せられるかもしれないと言うのだ。
そりゃ夏目、吹く。ニャンコ先生までかい。
勇に取り憑いていた妖は、大学裏の祠に居たもので、うっかり勇に取り憑いたものの、勇がその後ここに来てしまったので大学に戻らないと離れられなくなった。そいつが取り憑いているせいで、あの変な結界のある家に入ると勇の具合が悪くなっていたのだ。