夏目友人帳 漆・第2話
塔子が花の苗を沢山貰って来た。しかしここ藤原家の今の庭では花壇はもういっぱいになっていた。どうしましょう。そりゃ夏目が僕が花壇を作りますと言わない訳がない。ただ、そうは言っても花壇ってどうやって作るんだと言う事で滋が帰って来た時に作り方を聞いてみた。
花壇なんて適当に耕して小石で囲むだけなのではと思ったのに、なんだか凄い頑張っている。植える場所を耕したのは勿論だが、その周りに囲いを作る。でも囲いを作ってから石垣を作るのは逆ではないか。囲いが邪魔になるのでは。
或る程度まで石を積んだらもう日暮れ。続きは明日だ。
ところが翌日、花壇の石が崩れてた。最初にニャンコ先生を疑ったが、この作品だと多分妖だよね。その翌日もだった。犬だの猫だのの仕業ではない。石が減ってるのだ。犬猫が石を、その大きさの石をわざわざ持って行く筈がない。
と言う事で今更ながら夏目は妖の仕業だと踏んで夜に見張りをする。果たせるかななんだか白いグニャグニャしたのがやって来たので、何をするかと叱責したら予想外に5体も居た。
一体捕まえて聞いてみた。探していた石だったので思わず貰ってしまった。この石はつぎ石と言って貴重なのだと言う。それを何にするのかと問うと、彼らは箱庭を見せてくれた。
箱庭はよく出来ていたが、中は荒れていた。つぎ石はそれを直すのに必要。この箱庭を直すにはそれなりの力が必要で、そりゃそうだろう、彼らが見えて話せる人間でなければならない。おいそれと居るものではない。だから渡りに船と彼らは夏目に直してくれと言って来た。胴上げまでして。
でもそんな事されたら夏目が怒る。例によってポカポカと殴ったらそんじょそこらの妖怪では敵わない。ますますお願いしたい、やってくれないとこの家を祟る。藤原家を持ち出されると夏目は弱いので引き受ける事にした。
彼らは箱守りと言う。あの箱庭はしだ姫様と言う神様の来る行在所なのだそうだ。これまで箱屋敷はこれまでは箱屋敷を手入れする職人に頼んで来たがそう言う人間が居なくなってしまった。ここの所は箱守りだけで何とかして来たが全く手入れが行き届かず、荒れてしまった。このままではしだ姫様が来てくれないかもしれない。
我々が出来ない細かい作業をやって今よりもマシになったらそれで良いと言うのだ。それちょっと失礼なのでは。
ともかく箱守り達の言うとおりに箱屋敷を手入れして行く。羽で静かに静かに屋根のホコリを落とす。次は屋根を外して中のホコリを取る。ああ、そうじゃないとかうるさいけど。
昼は藤原家の花壇、夜は箱屋敷、これ夏目が疲れてしまうぞ。だから学校で田村がやつれた夏目を心配する。やばい妖じゃないだろうな。
障子も外してあの石を削った粉で白く塗る。ちょっとムラになるけど。専門の職人じゃないから。
この箱屋敷に寄るしだ姫様とはどんな人なのかと聞いてみたら、箱守り達がしだ姫様にベタ惚れなのは分かった。ちょっと期待しちゃうね。それだけ言われたら老人の神じゃないよね。
そしてしだ姫様のもてなしは大宴会だと聞いてニャンコ先生も黙っていられない。
そうこうするうちに藤原家の花壇も出来たし、箱屋敷も綺麗になった。
最後に塔子さんから貰った花の種をみんなで蒔く。
そう簡単には咲かない筈だったけど。
そしてその夜、ふと気がついたら夏目とニャンコ先生はあの箱屋敷の中に居た。そして振り返るとそこにはしだ姫様が。襖を開けると枯れ木だらけながら夏目には懐かしいものがある。
やがて箱守りが気がついて、しだ姫様も屋敷に喜んで、さあ宴じゃ。そう言うと枯れ木だらけだった庭に花が咲き、草本類にも花が咲く。多分夏目や箱守り達が蒔いた種の花も。
その後気がついたら箱守り達はもう居ない。ニャンコ先生はしっかりうまい酒を飲めた模様。