異世界失格・第2話
アネットが「あー!あー!」言うだけでは引っ張れなかったセンセーの入っている棺桶、結局タマと一緒に引っ張っている。ところでどこに向かっているのだろう。取り敢えずはロート王国に到着し、さっそく国王トマスに謁見する。
一体どう言う国制なのかはたまたアネットのバックが強烈なのか、歓迎されて王宮に泊まって行けと言うのだ。ただ、条件として旅の者の楽しい話を聞かせてくれと言う。さて文豪たるもの何か話が出来るかと思ったら棺桶の寝心地とか言い出すので慌ててアネットが話を王女シャルロットの方へ逸らす。
シャルロット様はお美しいですねと言ったらトマス王は自慢げにそうじゃろうそうじゃろう、実は今度結婚する事になっているのだと言う。まあそこまでは良い。それに続けて二人を中へと命令して入って来たのは戦士ゴメスと吟遊詩人オットー。この二人のうちどちらかと結婚させようと思っているがシャルロットが決めかねていると言うのだ。
そこで旅の者に聞いてみたい。どちらがシャルロットに相応しいのか。いやいや、結婚して国王にもなる相手をこんなヒョロっと来た奴に聞くのかよ。百歩、いや千歩譲ってアネットの教会の権威があまりに高くてそのアネットが従っているセンセーは教会の高い権威を持ってる前提なので聞いてみたと考えても良いが。
センセーの回答。知らんよ。
センセーの言い分は正しい。そんな大事な事を旅の者に聞いて良い筈が無い。君は王様失格。これひょっとして今後も誰かが失格シリーズで指摘されるのだろうか。
夜中に眠れないセンセー。眠れる夜などない、と言うけどそれは昼間に棺桶の中で散々寝たからでは。やけにセンセーの布団が盛り上がってるなと思ったら、寒いと言うタマが潜り込んでいた。ここでアネットとタマの喧嘩が始まるので二人を放置してセンセーは外へ。
するとシャルロットが外の湖を見つめていた。入水自殺しやすそうな湖だね。
文豪として人生を達観しているセンセー、シャルロットの悩みを見抜いている。そう、あの二人のどちらを選ぶべきか。国の為ならゴメス、でも幼馴染のオットーは自分が落ち込んでいる時にいつも歌を歌ってくれた。王室の王女としてならゴメスだな。そもそも吟遊詩人から国王に即位って国が乱れる元になる。
センセーの回答はどう生きていくべきかの選択は他人に委ねる訳ではない。君が本当に望んでいるのは何なのか。
さて翌日、シャルロットは結婚の相手を決めたので立会人になって欲しいとトマス国王に呼び出された。ああ、これはゴメスでもオットーでもないな。
歩み寄ったシャルロットはセンセーの手を取って、この方と心中します。
いや、結婚じゃないんかい。まあセンセーの相手としてはそれが正解だけど。
アネットなんて倒れちゃったよ。
シャルロットがあの二人を選ばなかったのは理由がある。オットーが落ち込んでいる時に歌を歌ってくれたと言うが、よく考えたらそうでない時まで来ていて、あれはただ単に新作を聞かせたかっただけだったのだと。そしてゴメスは臭い。
ただ、これで事態が大きく動く。ゴメスが動く。俺が匂いと言ったな。実は魔族が化けていた。首尾よく国王に収まってこのロート王国を魔王様に献上しようと思っていたのにシャルロット姫に見破られとはと。いや、そう言う意味で臭うと言ったんじゃないんだけど、まあ魔族特有の匂いがしたのだろう。
バレてしまっては仕方ない、おまえらを皆殺しにして国を奪う。遅ればせながら突入して来た兵士は雑魚で役に立たない。タマがそれなりの戦闘力を持っている。吟遊詩人、レベルが89もあるけど、歌での強化が全然出来てない。
なので硬い角を持ってる魔族に難渋する。
そこで介入して来るのがセンセー。なあ、殺すのなら僕たちにしてくれないか。自分とお姫様は心中したいのだ。これが姫様が選んだ選択だ。
シャルロット、ここに至ってやっと本当に本当の望みが出て来る。自分はこの国の民の為に生きたい。それを確認したセンセー、なるほど僕の心中相手としては失格だと突進して来る魔族からシャルロットを逸らした。
まさかこの状態でセンセーの猛毒が魔族に効くかと思ったら、今回はアネットが目覚めて強力な防御魔法発動。硬いと言われた角を砕く。それで弾き飛ばされた魔法をタマが殴り飛ばした。二人の協力で今回の相手は撃退。
これでやっとロート王国の王室は本当の統治に目覚めた。
センセーはまた死にそこねた。