薬屋のひとりごと・第21話
翠苓の事件があったのもあって、やぶ医者の医局で猫猫が自ら掃除を開始する。適当な人間に頼んで薬をすり替えられては大変だ。さあやぶ医者も手伝え。薬も湿気で悪くならない様に。
ひととおり掃除が終わって休憩のお茶の時間。やぶ医者、なかなか良い家の出らしく季節に合わない芋菓子がお茶請けになっていてしかもその下に敷く紙もちゃんとしている。どうやら実家は紙を作ってる家らしい。しかも宮廷御用達。
ただ、先帝の母が木の伐採を禁じてからは思うように紙が作れなくなり紙の貿易もうまく行かなくなり姉は後宮へ。妹も後宮に入ろうとしたのを、このやぶ医者は後宮の医者をやってるだけあって宦官になったらしい。これが実家にとっては金になって妹は後宮に入らずに済んだ。と言う事で紙づくりは妹が引き継いでいる。
ところがその妹から手紙が来た。宮廷御用達から外されるかもしれない。その手紙を触ってみて猫猫は確かに質が悪くなってると思った。引っ張ってみたらちぎれたし。何かあったのだろうか。以前より紙を沢山作れる様になった筈なのに。沢山作れる様になった?何か工程を省いたのか?それで紙の質が落ちた?
やぶ医者はそんな事はしてないと言う。以前から変わったのは沢山作れる様に力の要る場面で牛を使う様になっただけ。紙自体は均質だし表面も良い。何故簡単に破ける様になってしまったのだろう。やぶ医者は企業秘密の部分を隠しながらも水はノリが溶けやすい様に汲み置きにしてるとか話してくれた。紙を固めるのは小麦粉。
ピキーン!
猫猫は気がついた。
と言う事で猫猫の実験。葛湯を作ってみせる。わざと量を間違えてネバネバにしてみせる。これでは飲めないと言うやぶ医者に匙を渡してではこれをなめなめしては葛湯をかき混ぜてみてと言う。ああ、アミラーゼか。暫くしたら葛湯の粘度が落ちた。
さあこれで分かったろ?
あれ?未だ分からないのか!
実家の紙を作ってる所で牛を飼い始めたと言っていたよね。牛ってよだれが多いよね。ここまで来たらやぶ医者でも理解出来た。すぐに妹に連絡すると。
今回の推理モノ、ここだけだったな。
玉葉妃の所に戻ったら面会の話が来てると言うのでさては翠苓の事か!と駆け付けたら李白が待っていた。そして妓女の身請け金はいくらなのか。前回禿達の噂話を聞いて惚れてる白鈴が身請けされてしまうと思っている。実際は緑青館三姫の誰の話かも分からないし、信憑性も分からないけど惚れてるとその辺はすっ飛ばして心配なのだ。
猫猫にはその辺の察しはついた。目安の金額はあるとしても相手にもよる。大体の感じだと1万銀。一方李白の報酬は年間1000銀。李白の10年分の報酬。ただの会社員に1億用意しろと言ってる様なものだ。金の面では不足があるものの猫猫の見立てでは李白は悪い相手ではない。
では実際の身体はどうなのかと言う事で、さあ脱げ、脱いで身体を見せてみろ。うん、ちゃんと鍛えた身体をしている。あとは最後の一枚だけと言う所で何故か壬氏が入って来てしまった。
壬氏からあれは何だと絞られたので男としての身体の出来具合を見ていたと答える猫猫。ちゃんと普段から訓練してる体つきだと言う。あれ?これって競走馬見てるのと同じでは?
壬氏は焦ったが話を聞いて行くと李白が緑青館の三姫の一人に惚れているので猫猫に相談に乗って貰ったと言うのが分かる。と言う事で今度は壬氏が李白に話をもちかけた。どうだ、二万用意してやろうかと。
しかし李白は断った。好きな女を訳の分からない金で身請けは出来ない。
断った李白、まずは白鈴に文を送ろう。そうして進もう。
そんな話が猫猫にも伝わった。白鈴に気に入られたら大丈夫だろうと読んでいた猫猫だが、最後の一文が気になった。
「あの人が来て身請け話をしたのを禿が勘違いしたのだろう」