薬屋のひとりごと・第15話
役人の間で猫猫の事が噂になってる。李白が先日の事件の真相解明をしたが、その時に力になったのは下女でありそれは壬氏の所の下女らしいがそう言えば壬氏と言えば緑青館から妓女を身請けしてその妓女が知的な美女ながら目つきが冷たい。うん、大体合ってる。
事件解明に力になった下女の部分に片眼鏡の羅漢が興味を持った。
猫猫の所に高順がやって来た。これを見て欲しい。そう言って差し出された書簡には10年前の事件の記録で、河豚の毒に当たって死亡したと言う事件。高順はこの事件に関わっていたが、これと似た事件が先日起きた。官僚が河豚の鱠を食べて昏睡状態にあると言う。
ここで猫猫が凄い事を言う。それは自分が聞いて良い事なのか。猫猫、色々な場面で身分をわきまえているよね。
構わないと言う事で、ではどこが共通点かと言うと、確かに河豚の身と皮を湯引きした物が入っていた。大抵は肝のテトロドトキシンでやられるのだが身と皮とは。調理法が悪くて混ざった可能性はゼロではない。しかし調理人は河豚を使っていない、鱠には別の魚を使ったと言う。どちらも同じ主張で事件は起きた。
高順が追加で調べた。調理人が使った料理方法の本が手に入ったので主人に出す料理の作り方が書かれている。
今回の事件が起きたのは一週間程前。今は冬で冬場に使った野菜だと大根か人参だろうか。そう猫猫が思ったのに海藻を使ったと言う。
海藻とな!
猫猫がその点に興味を持ってその家の厨房を見せて貰う事にした。高順によって案内人に指名されたのは馬閃と言う武官。
屋敷の使用人の案内で馬閃が厨房に通されそのおつきの猫猫も入るが、そこに血相を変えて駆け込んで来た男が居る。勝手に入るな出ていけと。あからさまに怪しい。主人の弟との事。ただ馬閃が取り調べだと言うとそれ以上は言えなくなる。
猫猫は壺の一つに緑色の糸状の食材を発見した。使用人によるとそれは主人が好きで食べていた物。だから毒は無いだろうと言う。
毒が無いと分かったらとっとと帰れと言う主人の弟。それを素直に聞いた猫猫だが、こっそりその海藻を持って来た。猫猫、それを知ってるらしい。今の時期に手に入る物ではない。塩漬けにしても長くはもたない。だから近辺で採取されたものではなく、南方で採って取り寄せたのではないか。どこから仕入れたか分かると良いのですが(チラッチラッ)。
馬閃、頭が働くらしくそれでもう理解した。
壬氏立ち会いで馬閃が調べた結果をその海藻を前にして解説。確かにそこの主人が食べる物だがこの季節には普段は食べない。料理人も主人が食べる物で毒は無いと言う。ああ、料理人はこの海藻本来の姿を知らないのか。
でも猫猫は知っていた。毒がある物でも処理したら毒が抜ける物がある。この海藻の場合は石灰水で処理したら毒が抜ける。そう言って食べて見せた。当然壬氏も高順も馬閃も驚愕し、嘔吐剤を用意してると言う猫猫からそれを奪って無理矢理飲ませる。
さて、ではこれを南方から取り寄せたのは誰か。南方ではこれを食べる習慣が無いので多分処理をしていない。それを分かってやらせた者が居るだろう。ここに居る三人はこれだけでもう全部分かってくれる。
やはり犯人はあの弟。あの海藻の買い付け先は判明してるぞと言われて白状した。だがそれを吹き込んだやつが居る。たまたま酒場で隣で飲んだ男。誰がそれは。
さて最近壬氏を悩ませる男が居る。頭の切れる軍部の高官。おや?猫猫が反応したぞ。変わり者で40を過ぎても結婚していない。おい、40を過ぎても結婚してないのは変わり者だと(この時代設定)。猫猫は心当たりがありそうだけど、忘れる事にした。
いやそれはきっとあちらから絡んで来るぞ。
最近その男に壬氏が目をつけられて色々難癖をつけられているのだ。それで疲れている。それにしてもわざわざやって来て手酌で酒を飲みながら緑青館に居た女の話をしだした。変わった妓女が居て、でも金持ちが見受け金を釣り上げたので下げる手をうったと。それって女の価値を毀損させると言うのは身体を毀損すると言う事ではないのか。
その先を言わずに壬氏は最近謎解きが出来る下女を入れたらしいのでと言って、自分の周りで起きた件を話す。知り合いの彫金細工師が急死した。急死すぎて後継者を指名していなかった。だから秘伝の工法を伝えていない。その秘伝の技術を残された痕跡から頭の回る下女が解けるのではないか。
さて今回「海藻」とだけ言われた食材だが、恐らくそれは紅藻オゴノリかツルシラモではなかろうか。近年の日本でもオゴノリを食べて食中毒で死亡した例がある。私もオゴノリが毒を持つと言うのは習ったが、改めて調べるとどうも毒性が何由来なのか色々書かれてる。ある物はオゴノリとの食べ合わせとあったり、ある物は表面に付着した藍藻のせいだとあったり、ある物はオゴノリが生成する物だとあったり。毒性はプロスタグランジンE2らしい所はかなり一致しているけど。ともかく言えるのは作中で猫猫が言った通りに石灰水で処理しないでオゴノリをそのまま食べてはいけない。なのにオゴノリは日本においても海岸で容易に素人が見つけられる。私も採取して標本にした事がある。作中でも処理する知識が無いとそのまま食べてしまうとある。ところでオゴノリは紅藻なので海中では赤かったり採取して黒ずんだりするが、緑色ではない。では作中で綺麗な緑色だったのは何故かと言うと、湯通しによって赤い色素が抜けた状態になっているので。これも資料によっては湯通しで毒が抜けるみたいな事を書いてる物があるが、それだけでは危ないと思われる。