柚木さんちの四兄弟。・第10話
尊は湊に対して涅槃の境地である。知ってる。
そしてブラコンである。
ところが単純にそれで済まない関係がある。湊は湊で岳に対してブラコンなのだ。え?そうだったっけ?ここまでだったっけ?
ともかく湊が岳に強いブラコンなので湊が一旦岳の方に向いてしまうと奪われてしまう感覚になる。ここだけは涅槃の境地になれない。
しかし、そもそも湊はこうではなかった。それは7年前。岳が生まれる時の話。母は岳の出産の為に病院に入っていた。出産が間近らしい。それでも家に母が居ないと言って湊が泣き叫ぶ。湊、本当に年齢不相応にガキだ。
ともかくもう尊は尊の扱いに慣れていたので、それを逸して部屋に連れて行ける。お絵描きして見せると湊も描いてみる。当然尊の方が圧倒的に上手なのだが、上手だからと尊は湊のと交換して欲しいと言って手に入れる。これが尊の湊コレクションになるのだ。うん、もうこの時からやべーな。
二人の間では弟が生まれる前提での話になっていた。事前に調べてもう分かっているのか。だから湊が弟って何?と尊に聞くが、尊のやべー側面がまた出る。序盤の話の頃はここまでじゃなかったのに。
妙な事言われて湊が全然分からなかったので、湊から見たら湊みたいな子が出来るんだよと言われ、具体的イメージは出来たものの、自分みたいなわがままな弟が出来るのは嫌だなと思う。
そうして岳が生まれた。湊は動く岳にちょっと怖がった。尊も赤ちゃんの弟を見るのは初めてだったが、柔らかいなと言う事で、湊にも触らせてあげた。この瞬間だ。湊が岳にやられてしまったのは。
爾来湊は岳に対する強度のブラコンとなった。これはとりも直さず、特に手がいっぱいかかる乳児の頃の岳に湊がつきっきり。必然的に湊は尊の方を見てくれなくなる。
でも湊の性格からしてそのうちに赤ん坊の世話に飽きるだろうと尊は思っていた。でもその考えが間違いだと気付かされる。尊から弟って自分みたいだと言われていたけど、全然違う。すごく可愛い。そうか、湊も弟をかわいいと言う気持ちで、自分が思っている様に感じているんだ。だったらそれはずっと続くだろう。
そして今に至る。
さて、柚木家の中でも一番の人格者となった岳は湊からベタベタされて、それをちゃんと受け入れてそして逸らすのも出来る様になっている。そして尊が湊に執着してるのに対して割り込む隙間なんてないよとも言う。岳の方が尊よりももっと悟りを開いている。