薬屋のひとりごと・第7話
毒見役として毒入りスープを飲んだ事になるので猫猫は翡翠宮の侍女達からしっかり安めと言われた。それで翌日昼まで休んだ訳だが、その間に来た高順が待たされて草むしりをやっている。
高順は慎重に手を触れぬ様にしてあの毒入りスープの器を持って来ていた。そこで猫猫は指紋の鑑定。丁寧に扱われた銀食器なら尚更指紋が出やすい。見た所四人が銀食器が綺麗に拭かれた後に触った形跡がある。一人はスープを入れた者、一人は配膳した者、そして一人はあの里樹妃の毒見役で玉葉妃の物と取り替えた者。残り一人不明な者が毒を入れたのだろう。どうもその手は貴妃が口を付けるからと後宮の者なら触らない銀食器の縁に手を添えたらしい。
高順には腑に落ちない事があった。里樹妃の毒見役が皿を取り替えたと猫猫は気づいてるのに、ではなぜあの時に彼女を庇う様な言い方をしたのか。そう聞かれて猫猫はまるで猫がシャーっと言うみたいに警戒したが、高順が本当に興味があるだけだと言うので話した。高順は猫猫の周辺では一番誠実そうだし。
猫猫の推測だが、あれは里樹妃の侍女達の妃に対するいじめだと言う。それはこの皿の事に限らず当日来ていた衣装について言える事だ。里樹妃が着ていたのは玉葉妃の衣装の色と被る。そして侍女は妃と同じ系統の色を着る筈なのに当日は里樹妃だけが桃色衣装で侍女達は白い服を着ていた。流石にそれは阿多妃の侍女達に文句を付けられていたが。あの場面、ただの対立の場面じゃなかったのか。
里樹妃が先帝の妃から一旦出家して今上帝の妃になったのは流石にやはり反発を受けていた様だ。それにしても後宮に目を光らせていた壬氏はこの事に気づいてなかったのか?高順は壬氏の考えはかなり分かっていると思うが、その高順が気づいてなかったとは。
このあと高順は壬氏に報告するが、ここでちょっと変わった物言いを高順がする。簪が髪にささったままだ指摘して、本来の素性(特別な方)が分かる簪だと言うのだ。前回の場面で壬氏の補子が宦官の物に見えなくてしかも鳥とは言っても文官の官位に収まらない鳥に見えたが、やはり本来の素性は別にあるみたいだ。
猫猫は小蘭との話で簪を貰ったら後宮から外に出られると言う情報を掴んだ。あの簪があるとそれをくれた男性の力で後宮から出る事も可能なのだと言う。なるほど、壬氏以外の男性からはあの李白から貰った物だけだ。では李白に頼もう。と言う事で猫猫は李白の所へ。
猫猫がスッピンで李白の所へ行くと予想通りにおまえは誰だと言われてしまう。李白としては義理簪だったのでぬけぬけとやって来た猫猫には邪険だった。しかもたた単に後宮から外に出たいが為に自分を利用しようとしてると言われてはイライラもつのると言うものだ。当然駄目だと言うが、策略に長けた猫猫が空手で来る訳が無い。
そうして取り出したのがあの有名娼館の緑青館の一級妓女三名の紹介状。後宮官僚ですら会うこともかなわないトップの三人。驚いたまま返事が出来ない李白に、猫猫は駄目ですか残念です、他をあたりますと壬氏と玉葉妃から貰った簪をチラ見せ。銀だったり紅水晶の簪だから明らかに自分よりずっと上の者が与えた筈。そりゃ壬氏と玉葉妃だからね。これで焦った李白、猫猫の要求を飲んでしまった。
翡翠宮の侍女達はこれで猫猫が身請けされると思っていたが、でも猫猫はただの里帰りに利用したつもり。それを見た玉葉妃が可哀想なのはあの子だわと言って次の場面で壬氏がクシャミする。あれ?壬氏は「特別な方」と言われた上に玉葉妃からあの子扱いされてると言う事は帝室の者ではないのか。すると補子が鳳凰みたいだったのも頷ける。
猫猫は李白の手引で後宮の外、花街へ。李白は遣り手婆に任せて実家の父の所へ。最初の時からそうだったけど猫猫の父って父の年齢と言うよりもおじいさんだよね。このじいさんが猫猫に薬の知識を叩き込んだのだろう。そして最後の一言が意味を含んでいた。
「後宮とは、因果だね」
今回、事件は無かったけど、壬氏の素性、さらには猫猫の素性も普通ではない事が分かった。