おかしな転生・第12話・最終回
ルトルート辺境伯の策略に嵌ってしまったフバーレク軍。ものの見事にスクヮーレ率いる部隊が包囲されてしまう。窮地に陥ったスクヮーレ部隊の救援にモルテールン部隊が到着。
何しろカセロールは名にし負う歴戦の勇士、あっと言う間にフバーレク軍は蹴散らされた。それを聞いたルトルート辺境伯、まさに例のセリフを
「げぇ、モルテールン!」
フバーレクめ、そんな化け物まで手なづけていたのか、って、あんた、隣国だから未だ情報が届いてなかったかもしれないが、プラウリッヒ神王国内ではフバーレク辺境伯の娘とモルテールン騎士爵の息子の婚約は有名だぞ。今更驚くな。
モルテールン騎士爵が動くならカドレチェク公爵も動くのではないかと恐れたルトルート辺境伯は軍を引き上げる。
これでスクヮーレが助かったのは良かったし、フバーレク辺境伯は無事に帰って来たのを喜び、カセロールもスクヮーレの奮戦を褒め称えたが、自分が不甲斐なかったのはスクヮーレ自身がよく知っている。
カセロールは初陣で痛い目に遭ったらああなるのも無理はないと言うが、ペトラはすっかり気落ちしたスクヮーレの表情を心配していた。以前の様な笑顔に戻って欲しい。
と言う事でペイストリーがお菓子で助けてやれとカセロール公認の指示。フバーレク辺境伯も材料は何でも提供すると言ってくれた。今回もボンカを使おう。
広間ではフバーレク軍の祝勝会が開かれていた。フバーレク領名産のワインをどんどん飲んでくれ、って、それでペイストリーはリコリスに搾汁機を教えて貰ったのだった。世間の噂では手柄をよそ者のぼっちゃんにだけ取られたとか言われて、スクヮーレはますます肩身が狭くなっていた。
カセロールや辺境伯が慰めの声をかけても駄目だった。そこにペイストリーが作った菓子を持って来た。蓋を取ってみせると忽ち広がるボンカの香り。切り分けたのをまずはスクヮーレに。
これは何?ペイストリーはタルトタタンだと名前を教えた。美味しい香りに思わずスクヮーレも口の中に。こんなに美味しい菓子があるとは。そして名前の由来を聞いた。これはタタン姉妹に由来する。ある日、生地を敷かずに果物を焼いてしまった。あとからタルト生地を乗せて焼いて出来たのがこのタルトタタン。失敗から生まれたお菓子。
失敗と聞いて強く反応するスクヮーレ。だがペイストリーが続ける。タタン姉妹は失敗したからと果物を捨てず、生地を乗せて新しいお菓子を生み出した。失敗を失敗のまま終わらせなかったからこうしてタルトタタンが存在する。失敗は決して無駄ではない。
ペトラが続ける。スクヮーレは完全な失敗をした訳ではない。出陣の時の約束、無事に帰って来ると言うのを果たしたではないか。スクヮーレはなおもそれは部下の犠牲によるものだと言うが、そうやって部下の事を思いやるあなたを誇りに思うとペトラが言ってくれた。ペイストリーとペトラのおかげでスクヮーレ立ち直ったな。
良かった良かったと思う辺境伯。これもペイストリーのおかげで、欲しい物があったら何でも提供しよう。今、何でもって言ったよね。ただ、デジタルの秤はこの世界に無いぞ。
と言う事で沢山の荷物とともにモルテールン領に帰還。辺境伯に頼んだのはルースバッチ男爵が奪った品を手に入れるバックアップをして貰う。と言う事で、男爵からは山羊はもとより男爵が手塩にかけた馬まで奪って来た。搾汁機も到着。
山羊も砂糖も順調に手に入ってリコリスに約束していたチーズケーキも出来た。
リコリスと一緒にお菓子の国が築けそうだね。