おかしな転生・第7話
ペトラと間違ってリコリスを拐ってしまったストルーデル。ルハインは間違えたら報酬はびた一文やれぬと言われて怒り狂ってリコリスに剣を向けたが、ペイストリーに阻止され、挙げ句剣を落とされてチェックメイト。その頃には連絡を受けたカセロールが有志を募ってアーマイア邸に攻め込んで来た。
監禁する為にドアが一つしかない、窓も無い部屋を選んで万事休すかと思ったが、ストルーデルはあの穴を開ける魔法で大穴を開けて逃走。追おうとしたペイストリーを深追いはするなとカセロールが止める。
やがてカドレチェク家とフバーレク家の従者も到着。フバーレク家の従者はリコリスの無事を喜び父辺境伯の所へ。首謀者のルハインは捕らえられてもうこれは処刑されるのでは。
カドレチェク公爵から報告を求められたが、面倒事は嫌だとばかりにカセロールとペイストリーは残党を追うからとシイツに任せてまた屋敷の中へ。取り敢えず本当にストルーデルはどう逃げたか。ペイストリーによるとあの穴に近づいた時にあまり魔法力を感じられなかった。魔力が残り少なかったのではないか。だとしたら遠くまで穴を開けられない。屋敷はこちらの手勢で完全に囲まれている。
としたら、逃げた様に見せかけて未だあの穴に隠れているのでは。
堪忍したストルーデルが穴から出て来た。お前らを殺して逃げてやると言う。ペイストリーは一騎打ちでこれに臨む。カセロールの見たところではストルーデルの太刀筋は完璧。だが、ストルーデルの剣はペイストリーの剣に当たった所で折れてしまい、面食らったストルーデルはペイストリーに倒される。
壁の割れ目をストルーデルの剣に転写したので簡単に折れたのだ。転写、かなり便利に使ってるな。
一ヶ月後、スクヮーレとペトラの婚約のお披露目が大々的に行われる。嬉しそうなカドレチェク公爵登場。その時に手前を歩いて立ち止まる足があったので何だろうと思ったが。
でも良かったねだけでペイストリーが済まさない。カドレチェク公爵に問い質したい事がある。先日の事件、どうも腑に落ちない事がある。敵はかなり用意周到に準備していた。なのにペトラとリコリスを間違えると言う根本的な所でミスをしている。これは彼らが手にした情報に恣意的な間違いがあったのではないか。さらには没落したルハインにあれだけの拠点が用意出来たのもおかしい。
でもこれは第三者が手をまわしたと考えると説明がつく。偽情報を流し、ルハインに拠点を用意出来る様にしむけ、最も得をした人物。アーマイア家に恨まれてこれでトドメをさせる得をする人物。ここまで言われたらカドレチェク公爵もペイストリーが何を言いたいのか分かる。
そこまで言っておいてペイストリーは当家は困窮しており、援助が欲しい。カドレチェク公爵、それを断ったらどうなるのかと聞くとペイストリーはぬけぬけと自分の口が軽くなるだけですと言いおった。これでは仕方ない。
そこまで譲歩したカドレチェク公爵、ここから独り言。敵対勢力を一網打尽にしたかった、だから偽情報も流した、しかし断じてかわいい孫の婚約者になる令嬢とその姉妹に害が及ぶのは求めていなかった。露骨にたかって来て、抜け目ない奴め。
ここでフバーレク辺境伯もやって来た。フバーレク辺境伯から見たらカドレチェク公爵とは比べ物にならない程ペイストリーとカセロールには感謝している。喜々として語るフバーレク辺境伯がペイストリーはもう聖別が終わって成人してるのだよねと聞いてきた。この喜び方だと何かご褒美でもと思ったペイストリー。それは無理はない。
フバーレク辺境伯は続ける。これだけ将来有望なら引く手あまた。もう想い人は居るかなと。ペイストリー、あっさりそんな人いませんよと言うと、フバーレク辺境伯はすかさず良い人が居たら結婚するのかと言い出した。ここまで来たらカセロールは気がつく。でもまさか9歳の自分にすぐさまそんな話が来るなどとは現世日本で暮らしたペイストリーには思いもよらない事だった。
すかさずフバーレク辺境伯は私の娘はどうかと言うが、ペトラは今婚約したばかり。いやもう一人リコリスは双子なので同年齢で聖別をした。既に気づいたカドレチェク公爵が吹き出しそうになっていた。カセロールは頭を抱えるし。
ここはペイストリーに残された言葉は騎士爵と辺境伯ではあまりに身分違いと言うしか無いね。それなら貴族社会の話になるから。と言うか騎士爵は貴族とも言えない。分不相応では足りなかった。だからそんな程度の言い訳は聞かない。うちの娘では駄目なのかと睨むフバーレク辺境伯。
これで決まった。フバーレク辺境伯はすぐさまお披露目の準備を命じ、カドレチェク公爵もここぞとばかりに準備を命じる。既にカドレチェク公爵家とフバーレク辺境伯家のお披露目だからと沢山の貴族が参集していた所にリコリスとペイストリーの婚約まで発表されてはもう王国中に広まったも同然。でもペイストリーが改めてリコリスを見たらこんなにかわいい人だったっけと思うので、それはもう良かったねと言えるだろう。
もう既にペイストリーが好きになっていたリコリスは自分で良かったのかと言ってくる。ペイストリーは勿論と返すが、一緒に持って来た手作りのクッキーが、おそらくアレなんだろうなと思ったら塩味のきいたクッキー。でも美味しいと言ってあげるとこれ以上無い笑顔で、ペイストリーはこの笑顔を守りたいと誓うのだ。