おかしな転生・第9話
フバーレク辺境伯の考えでリコリスは暫くモルテールン騎士爵家に滞在する事になった。それが子供達の間でペイストリーの婚約者が来た、年上で(ここまでは合ってる)お色気ムンムンな人だと噂が広まる。誰が尾ひれ付けた。
辺境伯がリコリスをモルテールン家に預けたのは女狐レーテシュ伯爵が婿殿に新茶試飲会とか言ってちょっかいを出して来たから。だからカセロールが王都から戻った時にペイストリーが新茶試飲会に行くのは了解済みと言ったのか。辺境伯と相談したんだな。そしてもうひとつ。きな臭くなりそうなのでリコリスを安全な場所に移した。
子供達や大人達の思惑などは別にしてペイストリーはリコリスを厨房に案内してお菓子作りを見せていた。またボンカ(リンゴ)が用意されている。何作るんだろう。
まずはベッコウ飴で色々な形の物を作成。ちょいちょいと簡単に作るのは流石に前世で一流のパティシエだっただけの事はある。
ボンカには櫛を刺した。あれ?これって。そしてその上から飴でコーティング。あ、りんご飴ってこうやって作るのか。一度も食べた事が無いから全く分からなかった。あの様子だとてっきりリンゴが中で焼かれた状態なのかと勝手に思っていた。生のリンゴに飴をコーティングするのか。
レーテシュ伯爵の居城で大新茶試飲会。伯爵にしてはでかい城なのでは。海運で余程潤っているのだろうか。
ペイストリーが転写した伯爵の絵が飾られていたり、コアトンからやけに丁寧に迎えられたりして警戒されてるのを感じるペイストリー。でも今回ペイストリーには目的があった。この新茶試飲会でお菓子を売り込みたいと言う目論見。
広間のみんなに紹介されたのを機会にペイストリーはあのベッコウ飴を試食に出した。南部貴族の間で大ウケ。コアトンにも大ウケ。そしてすかさずアピール。お気に召したら出入りの行商人から届けさせましょう。今回のは無料です。ただし、その行商人には砂糖商品だけでも税をかけない様にして貰えるかと提案。
ペイストリーとしてはこの程度の商品に税をかけるのはどうか、と言う流れから関税を無くしてこちらの商品の流通を促進させようと言う腹積もりか。でもそう言う画策を黙って見ているレーテシュ伯爵ではない。ちょっとお話しましょうと誘う。商売の話なのでリコリスはこちらで待ってと言われてしまった。でもリコリスは社交には未だ慣れていない。不安になっていた。
二人の相談となって伯爵から本当の狙いは何だとストレートな質問。伯爵はあの場に居なかったのでペイストリーは改めてベッコウ飴を出してみた。伯爵も感心したベッコウ飴。伯爵はこのベッコウ飴の材料は理解した。砂糖と蜂蜜で作られている。でもペイストリーが砂糖と蜂蜜は全部当家で揃える予定と聞いて伯爵は色めき立つ。あんな不毛の土地だったモルテールン領で砂糖と蜂蜜の両方を?
ペイストリーが伯爵と二人になってまで話したかったのは、レーテシュ伯爵領が港を握っているので流通に便宜をはかって欲しいと言いたかったから。
ペイストリーは一体何を将来に向けて狙っているのかと思った伯爵ではあったが、でもそれすらも取り込もうと菓子の件については認めた。ペイストリーは菓子の国しか考えてないんだけど。
広間に残されたリコリスにコアトンが余計な事を吹き込んだ。ここに集まる南部貴族の女性達もペイストリーに求婚するのではないかと。リコリスは未だ少女。そんな事を言われたら周囲の噂話がとても気になる。
もう帰りたいと広間の外に出たリコリス。そこにペイストリーが伯爵と一緒に帰って来た。戻りながらリコリスの噂話をするのだが、照れてるペイストリーかわいいわねと伯爵が後ろから抱く。
そこにちょうどリコリスが出て来た。まずい場面を見られちゃったね。でも伯爵の最初の狙いはこれではなかったと思う。