わたしの幸せな結婚・第3話
「初めてのデヱト」
最初のモノローグでも美世が「デヱト」って言っていたが、でもこの時点での美世にはこれがデヱトと言う認識は無かったのではないかな。帰って来てからも。
第1話では斎森家から追い出される様に九堂家に嫁に出された美世。冷酷として知られていた当主久堂清霞で、それは第2話の冒頭でもそんな雰囲気があった。美世が朝食を作ったと聞いて、毒が入ってるかもしれないと食べなかったのだ。でも第2話でその態度が大きく変わる。最後の方ではゆり江は今朝は遅いからお前が作れと言って作らせるのだ。素直じゃない、別にゆり江は遅くなかったのに。
その辺りから清霞は美世が予想していたこれまでの嫁候補とは大きく違うと言う事に気がつく。今回の話で分かるが、清霞は美世が斎森家の長女だからと言う理由で求めたのとは少し違うのだ。勿論名家の娘と言うのは聞いてはいたが、それだからと言う理由ではなかった様だ。
だからまずは身なりでも違和感があった。着古した着物しか無さそうで、しかもゆり江の見た話によるとそれを自分で繕って着ていると。そのままにしておく訳には行かないと、清霞は美世を連れて都内へ向かったのだ。
ゆり江はおでかけと心得て美世に化粧をしてやった。勿論美世は化粧道具など持っていなかったが、ゆり江が用意して、化粧もやってくれる。美世は今迄化粧をした事が無かったからゆり江がしてくれた訳だが、これが多分良かったのではないか。ゆり江は清霞がどんな感じが好きか嫌いかを承知してるのでそれに合った化粧をしてくれて、多分その美世を見たら清霞は目を見張るだろうなと期待したらその通り。
第1話の描写ではかなり地方なのではと思った九堂家だが、どうも大正時代の東京の都市規模なのでせいぜいが多摩とかあるいは練馬区みたいな場所の様で、清霞の運転する車で軍の駐屯地まで行ってそこから都心に向かう。
呉服屋へ行ってかねてから言っておいた美世の為の生地を見繕っておいて貰った。店主の桂子は美世を見てなるほどと理解して奥で美世に似合いそうな生地を選んでくれる。ふと清霞が見た先には桜色の生地があったが、あれを今から用意すると季節に合わないと言うので見送った。ただ、清霞はあれは美世にこそ似合うと思った様だ。そんな清霞に桂子が言う。今回の嫁候補は絶対に手放してはいけないと。あれは原石。これから磨くとそれはそれは素晴らしい女性になる。そうしたら着物を着せて愛でる事が出来ると(おいこら)。今回、この桂子の他にゆり江も美世を絶対手放すなと言うんだよね。
前回の最後に辰石実が斎森真一に電話口で文句を言っていたが、押しかけて来て本格的に不満を述べているらしい。約束が違うと。ここで少し事情が明らかになる。まずは作品冒頭で言われていたこの世界の設定。異形の物が出現する世界で、それには異能者がどうしても必要だった。これは既に清霞が軍で訓示していた事だ。そして再森家はその異能者が生まれる家系。これは辰石家も同じらしい。そして美世の母はやはり異能を持つ薄刃家の娘だった。だが美世は異能を発現出来なかった。それで真一から疎んじられたのか?と思ったら、それだけではない。元々真一は香耶の母の香乃子と恋仲だったのを、薄刃家と言う異能の家系との政略結婚をさせられてしまったのだ。だから美世の事をそもそも快く思っていなかった。そこに美世の母が亡くなり美世も異能を示さないとあってはあんな待遇になった訳で、そして今回の九堂家へ送り出したのも言わば捨てたも同然の気持ちだった。一方で実の方は美世が能力を見せなくとも薄刃家の血をひいていると、自分の息子の嫁に迎えたらその子が素晴らしい異能を示すかもしれないと期待していた。だから乗り込んで来た。真一がどうせ九堂清霞に美世が異能を持っていないと知られたら追い出されるだろうからその時は勝手に拾えと言われ、実はそれを期待する事になる。あ、これは清霞が美世を受け入れても何だかんだ手を出して来る前触れでは。
都内から戻った清霞は呉服屋の桂子から受け取った物を美世の部屋の前に置いておく。風呂からあがった美世がそれを見て最初はこんな高価な物は受け取れないと言うが、清霞の気持ちを受けて嬉しそうに受け取る。それがまた清霞の心を打つ。
こんな美世を清霞は情報屋を使って調べていた。どうにも名家の令嬢には見えない。何があったのかと。その結果が上述の通りで驚く清霞。そして美世に異能が無いと聞いても全く意に介さない。一方の美世は今はこの生活を大切にしたい、いつの日か自分の口で自分には異能が無いのだと明かすまではと思っていた。清霞が気にしてないのにね。