スキップとローファー・第5話
美津未の入った高校は東京の進学校なのでテスト前ともなると勉強にうちこむ生徒で溢れる。うーん、うちは誰も何もしなかった様な記憶が。そりゃ家でやったけど。
でももっと熱くなる物があって、それは中間試験期間後の球技大会だった。やるからにはクラス優勝目指そう!これは無かった。うちの学校では間違いなく無かった。
学級代表として無様な姿は見せられないと思う美津未。いや、そう思っていたのは美津未だけなんだけど。しかもよりにもよってバレーボールとか初心者がやるには少しハードルの高い競技を選んだね。あとで美津未が痛い目に遭うけど、レシーブを腕でやるのって痛くてバレーボール嫌いだった。だからまともにレシーブ出来た記憶が無い。
当然私はこう言う誠と同じタイプだった。
真面目に悩む美津未に聡介が練習に付き合うよとは言ってくれるが、女子で誰か経験者いないかなと言って白羽の矢が立ったのはミカだった。なーんで私がと思うミカではあったが、聡介も一緒と言うのがメリットだった。
こうして練習を重ねる美津未。ナオちゃんからはお世話になってるからこれあげなさいとくれた袋の中はあんぱんとかクッキーとか甘いものばかり。ミカは太らない様にしてるのにと飲み物だけ貰ってあとは返す。このあとミカの回想があるんだけど、以前はあれだけ幅があったんだ。今回はミカがあの頃の悲しさを何とかしようとして今の自分を作っていると言う話だった。
聡介が先生に頼まれごとがあって美津未とミカの二人だけの日。体育館は今日は一年生が使う日なのに三年生が遊んでいる。まあ体育館は広いので彼らを避けて練習をしていたのだが、三年生の男子はミカにぶつかって来た。これに黙っていられなかったのが美津未。
でも三年生男子はこれを無視。これだ。ミカのトラウマはこれなのだ。
その時、二人の男子を叱る他の三年生男子が居た。白井、柴本、一年生女子相手に恥ずかしくないのか!そう言われて流石に恥ずかしくなって小声でごめんと引き下がる二人。だがここでミカの心の許さじノートに刻まれる。一方美津未は違うのだ。あの二人の方ではない。注意をしてくれた福田先輩の名前の方を靴から覚えている。
ああ、ここだ、これが自分と美津未の違う所なんだ。自分は恨みを持つ相手の名前を刻むのに、美津未は良い事をしてくれた人の名前を覚える。
とびきりの美人でもない、純粋な人間でもない、そんな自分を一体誰が選ぶんだ。でも美津未からバレーボールのコーチには選ばれた。どうして?結月だってバレーボールの経験者なのに。自分は美津未に嫌な事もして来た。だから自分になら迷惑かけてもよいと思った?
確かに美津未はミカが自分に当たりがキツいとは思っていたけど、でも嘘は言わない。だからコートとして忌憚ない事を言ってくれそうと思ったから。実際分かりやすかった。きっと練習して上手になったんだなと思った。ミカ、自分の努力を何も言ってないのに分かってくれる人が、美津未が居たよ。
これで本気出したミカ。そしてその姿を丁度聡介が見てくれて、頑張れって言ってくれる。報われた。
球技大会当日。ああ、女子って髪の毛をまとめるんだ。美津未みたいなショートカットでも。美津未のクラス(1年3組?)は順調に勝ってトーナメント進出。お昼には美津未がみんなに浅漬提供。聡介にもあげようと思った美津未だったけど、ミカはそれは無理なのではと。
行ってみたら聡介の応援が凄い。先輩の女子まで。こんなにもモテるだと改めて自覚した美津未。流石に浅漬は渡せない。でもここで兼近と遭遇。補欠だからおにぎり作ってたんだと言う兼近、ちゃんと会話も聞いていた。そこでおにぎりで浅漬食べようと言う結月達を見て、おもわず聡介は寂しいんじゃないかなと。下手に人気があると遠慮されちゃう事もあって、それが寂しいのではと言うのだ。
バレーボール決勝戦。相手はバレー部のレギュラーまで居る強敵5組。うん、部活やってる相手は素人から見たら桁違いなんだよ。入学式の日のあの必死だった時を思い出して死ぬ気でレシーブした美津未。敵わなかったけどね。
入学式のあの日を思い出した美津未は男子バスケットの決勝をやってると知って、ちゃんと渡さないと駄目だと走って行った。そんな選択が出来るなんて羨ましいよと言うミカに残った3組女子が一斉にミカもやっぱり聡介好きなの?と。みんなその辺気にしてるんだなあ。