ワールドダイスター・第7話
アラジンと魔法のランプでの自分の演技の間違いに気がついたここな。改めて過去に演じられた様々なタイプのアラジンから何が良いのかを考えて行こうと言う事になった。
一方、ここなを完全に食った八恵。八恵は聖歌隊の歌を聴いた柊から声をかけられた。よかったら一度シリウスの劇を見に来てくれと。そして見に行った八恵が柊の演技に感動した。柊が泣けば観客も泣く。自分でもあんな事が出来るだろうか。
雑誌のインタビューの後で柊は八恵に結構直球で聞いた。インタビューは八恵だけで「主役」の筈のここなは呼ばれていない。今の事態になるのは分かっていたんでしょうと。でもここでも八恵は舞台の事は心配しないで下さいと言う。以前ここなに何があっても自分が何とかしますと言った時は何か腹黒さがあるのだろうかと思ったのだが、どうもそうではない。柊にも同じ事を言うのだし。そして今回最後の方でそれが分かる。
静香が色々なアラジンを演じてみたが、これと言うのが決まらない。そこでここなと静香が言い出したのは毎回アラジンの演技を変えてみたいと言う事だった。そんな事を言われても演出がうんとか言える訳が無い。そしてそれは演出家にとどまる筈が無い。ここなと演じる他の役者にも影響があるし、舞台装置や装置の動きにも全部及ぶ。今から色々試したいなんて遅すぎると言われた。
それでも引き下がらないここな。ぱんだがわがままかよと言うけど、カトリナは両親がワールドダイスターな二人は、こと演技に関しては絶対譲らないと言っていた。八恵が自分は構わないと申し出た。何かあっても自分が何とかすると。そしてカトリナも知冴そしてぱんだも。
確認されて柊も認めた。変えるのは一回だけ。それでもダメだったら今迄どおりの演技に戻す。これでここなが舞台に立てなくなっても仕方ない。ここ、言葉が突き放す感じだったけど、柊の表情を感じ取ったぱんだが「あれ?」と思った。柊、喜んでる?
柊、ここなと静香を連れて行く。やっとここまで来たか。遅すぎる。今迄やられたアラジンをやってみると言うが、それは全部忘れろ。自分が相手をするからイチから作るぞ。ここなのセンスの使い方を教えてやる。
ここなの回想。柊に誘われて劇団シリウスに入った。そしてとうとう人魚姫で人魚姫を八恵が、王子を柊がやる日が来た。嬉しい八恵が柊の所へ行こうとしたが、柊がシャモと話をしているのが聞こえる。柊はシリウスに残る。残ると言う事は年齢制限で役者をやめる。それで良いのかと言うシャモ。うん、あんたが決めたルールだろうが。それは置いておいて、柊は心残りがあったのだ。シリウスでワールドダイスターを未だ生み出して居ない事に。だから自分が残って後進を育てて必ずやワールドダイスターを生み出す。その思いが八恵に伝わって八恵がどうしてもワールドダイスターになろうと言う気持ちになった。
柊による稽古を乗り越えてここなが愈々新しいここならしいアラジンを演じる日が来た。ぱんだ、演技のレベルが上がってるぞと見ていた。ここなが柊から教わったのは静香との役割分担だった。あの人魚姫のオーディションの時にここなはどうしたか。それは静香の演技をイメージしてやった。そう、ここなのセンス静香は役を吸収昇華するセンス。そしてここな自身はそれを演じるセンス。こうしてここなの演技が生まれる。
とうとう二人のセンスが合体したよ。
この域に達したここなは八恵の凄まじい演技にも飲み込まれない。八恵のランプの精にここなのアラジンは本当にアラジンの様に反応する。それは嘗て八恵が柊に見た、ここなが笑うと観客も笑うそれだった。
八恵のセンスの欠点はあまりに八恵だけが観客の目を惹く演技だった。しかしそれは舞台全体で見た場合、舞台を壊している事になる。そんな演者を世界のどの劇場が受け入れるだろうか。八恵の力を見せつつ、それを相対化出来る演者が必要だった。
ここながアラジンを演じきれたアラジンと魔法のランプは大成功。上演後の物販はとうとうここなのブロマイドも売れだした。
ここなはこれで気がついた。自分が舞台を壊していたんだ。一人で全部支えられると、無邪気に微笑んでいたのは間違いだった。柊はそれは一人では気づけ無いもの、自分はそれに気づくのが遅くて手遅れだった。だから八恵とここなをぶつけたのだ。
八恵「助けてくれてありがとうございました」