転生王女と天才令嬢の魔法革命・第8話
アバンはあの婚約破棄事件の前か。アルガルドにはアルガルドの正義があったと?
場面は変わって今のレイニ。自分がヴァンパイアだと知って未だに戸惑いを隠せない。そこにアニスが仕掛けておいた警報装置が鳴る。誰か侵入者があったのだ。
警報が鳴ったらすぐに王宮からこの離宮にアニスが駆けつける筈。だからイリアはレイニを守って時間を稼ぐ。そう考えていたのに、毒ガスかもしれない煙が充満して来ては外に出るしかない。しかしそこにいたのはアルガルド。ただの不審者じゃなかった。王族としての魔法を使えるアルガルドは強い。イリアを貫いてしまった。
警報が鳴る少し前。前回のユフィリアの大演説の後の様だ。シャルトルーズ伯爵が懸命に精霊の伝統について説いている。もう帰りたいなあと思っていたアニスのところにモーリッツがやって来て盛んに話をして引き留めようとしていた。先に警報の場面を見てるからこいつはアニスを離宮に帰さない足留めしてるなと分かる。そこにあの警報。モーリッツは行こうとするアニスの腕を掴んでまで止めようとし、あまつさえアニス様ご乱心とまで叫ぶ。そりゃ普段からキテレツ王女と言われているかもしれないけど、そんな噂があってさえ魔法が使えたらアニスの方を王に戴きたいと思ってる人達って、こう言う時に変だと思わないのか?
怒ったアニスがドラゴンの力を発動。益々シャルトルーズ伯爵と兵士がアニスを束縛しようとするが、ユフィリアがこれを阻止。さらにはティルティが魔法を発動させて兵士やシャルトルーズ伯爵を拘束する。ティルティ、侯爵令嬢なので「伯爵ふぜいがこの私に何を言うか」程度は言っても良かったのでは。
これでアニスとユフィリアが離宮へ飛んで行く。しかし遅かった。既にレイニは無惨な姿で虫の息。そうか、アルガルドが自らこっちに来たのはレイニの魔石目当てだったのか。そしてそれを奪う為ならレイニの胸を抉るのに躊躇しなかった。
レイニから奪った魔石をアルガルドは自分の胸に埋め込む。ここでアルガルドの目的は見えた。アルガルドは魅了の力が欲しかったのだ。そしてそれは自分が王になった時に自分が理想とする王国の改革をする為。
アルガルドは王国の現状を憂いていた。彼なりに。貴族と平民に分断されたこの王国を、お互いが手を取り合う国にしたかった。先代の王、即ち祖父がそれを行おうとしたが、それに反発する貴族の反乱を誘発してしまう。反乱は辛うじてオルファンスとグランツ・マゼンタによって鎮圧されたが、改革は頓挫。自分はそれを成し遂げる。その為には魅了の力が必要。ひょっとしてレイニが大人しく自分の后になっていたら無理矢理奪うと言う強硬手段は取らなかったのかも。だがレイニは姉アニスに奪われる。レイニまで。アニスは自分から何もかも奪う。そのくせ自分は王位継承権を放棄してしまう。そんな姉に何かを言われる筋合いは無いと言うのだ。
これ、アルガルドは体裁の良い事を言ってるけど、根底にあるのは姉へのコンプレックスで王位は転がり込んで来るかもしれないが、姉に見劣りする王としてずっと陰口を叩かれるのに耐えられず、だったら祖父ですら成し遂げられなかった王国改革を自分がやってみせる事で姉を超えた偉大な王と言う自分になりたかっただけじゃないのか。王国改革なんて綺麗事の看板で。
アニスはこのやり方を認めない。他人を犠牲にして王の力をふるうなんて許せない。ここだよ、ここ。「転生」王女の看板を掲げているのならそれを活かして欲しかった。現代の西欧自由主義の価値観では権力者が国民を犠牲にしてまで自分のしたい政策を実行するなど許されない。ここでアニスには「国民を踏み台にした独裁者の国で国民が幸せになった歴史など無いわ!」と叫んで欲しかった。それこそが血迷った弟を糺す強い意志の見せ場だったのに。
ともかくアニスは弟を糺す為にドラゴンの力を振り絞る。ユフィリアには瀕死のレイニの治癒魔法を任せて。かくて姉と弟の決戦へ。