うちの師匠はしっぽがない・第10話
大黒亭の弟子としていられるかの試験を受け、先ずは白團治の試験に合格したまめだ。次はメトロノーム圓紫だ。と言う事で圓紫の所へ行ったものの、でかい屋敷でたのもーと言っても暫く誰も出てこず、やっと出て来たかと思ったらショタからうちの師匠は忙しいんだと門前払いを食ってしまった。
でもまめだ、小動物の身軽さを舐めるなよとタヌキ姿で屋敷内に侵入。
圓紫の弟子の圓雨は圓紫がちょっと喋っただけでその先をすべて読む優れた弟子。メトロノーム要らない。今日のスケジュールの話をしていたが、ほとんどの時間が埋まっている。大変だな圓紫。
そこにまめだが飛び降りて来た。認めて貰いに来た。白團治の試練を合格して来たと言うのならこっちへ来いと。そしてまめだをあげて、メトロノームで普通のテンポで話してくれたが、圓紫の試練は今からやる圓紫の寿限無を覚えて一週間後に再現しろと言う。一言一句違わずに。圓紫はさっき聞いたとおりに忙しいので次は四日後。その二回だけ聞く機会があるだけ。それじゃ今から10分15秒で話そうと始めた。圓紫、落語を話す時はメトロノーム要らない。
圓紫が課した試練の意味は、ただ単に同じ噺をするのではない。ある日ふっとやって来た客がそれを聞いて、これは駄目だと思ったらもう終わり。そう考えて完成度の高い噺が出来るかと言う事だ。
そう言われてまめだは必死に圓紫の寿限無を聞いたが聞いているうちに引き込まれてしまい、気づいたら終わってしまっていた。
ここからまめだは圓紫の噺を何度も反芻してみる。一言一句違えない様にと言うので、ちょっとしたノイズも大変だ。どこか集中出来る場所は。そう、修行と言えば山の中。
場面変わって誰だあんた。諏訪部さんてのは分かったけど。聞いているうちに成程これが先代の大黒亭か。圓紫は大黒亭の所へ弟子入りしたいと言って来た。だが大黒亭はお嬢ちゃんみたいな子は別に落語をやらなくても良いだろうと言う。しかし圓紫は今の家の名前によってチヤホヤされるのは本意ではない、名前ではなくて自分で見て貰いたいと言う理由だった。それが何故落語なのかと言うと大黒亭のが面白かったから。名前に縛られると言えばこんな噺があると大黒亭が話したのが寿限無。
あれ?お嬢ちゃんの頃の圓紫、メトロノーム無しで普通に喋れるぞ。
そして二回目のまめだが聞ける日。まめだはじっと圓紫の寿限無を聞いて終わって挨拶するや否や飛び出した。そして山の中へ。山奥で修行だ。修行をしているうちにどんどんボロボロになって行くまめだ。あの仲間から変化をバカにされた日々も思い出しながら。自分の居場所は今ここしかないのだと。
そして試験の日。春来亭にまめだが来ない。なんだあっさり諦めたなと言う圓紫だが、しららが到来を告げる。すっかりフラフラのまめだが入って来る。でも高座に上がったらすっかり変わって寿限無を話しはじめる。愚直に圓紫の話したとおりに。圓紫は頓知で誤魔化そうとしたらすぐさま不合格と思っていたがまめだが真面目に始めたのでそのまま聞いていく。
寿限無を話している途中で名前を付ける、とその場面にさしかかった時にまめだの言葉が途切れる。圓雨は忘れたなと侮ったがそうじゃない。名前、大黒亭まめだは師匠の文狐が付けてくれたもの。そこで噺の雰囲気が変わる。可愛い息子の名前だ、一生懸命に覚えると、名前に寄せる思いが吹き出る。
圓紫は思い出した。大黒亭は圓紫が名前は縛りだと言ったのに対して、名前が大事だと言う者も居るんだ、名前が縛りだと言うおまえには大黒亭の名前はやれないが。
一席終えてまめだが倒れる。起きたら圓紫が居る。何故そこまで大黒亭の名前にこだわるのかと。まめだ、ここが自分の居場所なんだと強い意志を見せる。
圓紫の寿限無は、弟子を取らない大黒亭は自分で終わりだと息子にすら落語を教えなかったのを、これだけは圓紫につけてくれた噺。それが誇りだった圓紫。なのにある日大黒亭はどこの子とも分からない子を連れて来て一代限りの弟子にしてしまった。それが文狐だ。
今まで納得出来なかった圓紫だが、まめだを見て分かった。大黒亭の名前はなりふり構わずあがく者の名前だったのだと。だから先代の寿限無をまめだに渡せてすっきりした。こうしてまめだ、圓紫の試験にも合格。あ、前回一つの扇子に三人全員の名前を書くんだろうと予想したけどハズレた。
文狐、まめだを心配していたが、白團治は今の文狐の方が良いと言ってくれた。そして思い出す文狐。ああ、大黒亭やはり文狐が九尾の狐と知って連れて来たのか。どうも文狐が衰弱してるのを拾った感じだ。
今回のしっぽなのしっぽはやはり寿限無の解説。大まかな内容は語られた通りなのだが、いざ名前が付けられてサゲになる迄が笑いどころ。長い長い寿限無の名前のせいで普段の生活場面が大変になると言う。