うちの師匠はしっぽがない・第5話
まめだ、変化の修行をしていた。やはり何だかんだ言って世話してくれる文狐。でも針に糸を通すのに集中してまめだの変化が解けてしまう。誰かに狸とバレたら破門だぞ。
しららが指を詰めようとしている。前回お騒がせした償いとして。でも文狐が早くやれと言う位なので、模造品のナイフだった。皆はしららの件を気にしてないよと言ってくれる。また、そろそろしららを中座(東京で言う二つ目)にと言う声もあるそうだ。
落語の世界は前座→中座→真打ちと出世魚の如く名前が変わる。しららが前座になれたのはかけだしをやって一年後。大抵は三年かかるのを、ある日しららが師匠の白團治の本を読んで勉強しているのを白團治が見て、おまえはもう明日から前座だと言ってくれたのだ。まめだ、そうかそうやって認められるのかと帰ってから同じ事をした。
文狐のメガネまで使って夜中に文狐の本を読んでみる。でも文狐は何やってんだと言う顔。と言うのもまめだは未だ字が読めないからだ。あ、そりゃ何やってんだになるな。当然の結果としてまめだは文狐の本の上でヨダレを垂らして眠ってしまう。これじゃ文狐も怒る。
楽屋で小糸にお茶を出したら小糸がありがとうと言ってくれるのは良いが、朝早くから大変だね、狸は夜行性なのにと言われてしまった。やはりバレてる。
黙ってる代わりにやらせて欲しいと言うのはモフモフだった。小糸、モフモフが好きなのか。ところでこの小糸は結構天然ぽさがあって、文狐の前でバラしそうになったばかりか、作次郎とお松にもバラしそうになる。
文狐の次の演目は辻占茶屋。途中でお囃子と絶妙のやり取りが重要な話。小糸の師匠なら出来たが小糸は初めてで、頑張ってやらねばと気合を入れた。
ところが当日小糸は置いてあったお茶の盆に足を引っ掛けて転んでしまい、三味線が壊れてしまった。そうか今回のまめだの試練はこれか。
予想通りまめだは三味線に化けた。もう小糸には狸って知られているのでそこは問題ない。それにしても狸の変化ってそれっぽくなるだけでなくちゃんとした音も出せる三味線に化けられるんだ。
こうして始まる辻占茶屋。話の中で部屋に上がった源やんが隣の部屋から聞こえる三味線と唄の文句を聞いてトントンとうまい事話が進んで行く。ところが小糸の力がどんどん入ってまめだはくすぐったくてくすぐったくてとうとう我慢出来ずに「ぽん」と言ってしまった。
「ぽん?」「なんやあの三味線は狸の皮でも使ってるのか」と文狐は上手いフォローをした。
でもこれで文狐には自分が狸だと小糸に知られているとバレて、破門にされてしまうと思ったが、文狐は小糸は特別だしあれを見捨てなかった方を評価してくれる。そして変化も頑張ったじゃないか、お前も成長してるんだなと褒めてくれた。そこで自分も試しにまめだの三味線を弾いてみたら、まめだがたらまずに変化が解けてしまった。でもどうして人間の姿に。抱っこ描きたいだけか。
今回の辻占茶屋のお囃子と源やんの掛け合いの部分、物語のキモになってるけど、私は落語としての記憶に全然無かった。
調べてみたら東京落語ではあの部分が無いらしい。女郎の気持ちを確かめるのに心中を使う噺は他にもある。この噺の最後はお互いが石をドボンと放り込んで、お互いが相手は飛び込んだかと勘違いして死なずに済むのだが、物語は今と違って夜は真っ暗と言う時代前提なのでこれが成り立つ。また、しっぽなのしっぽで絵として描かれた場面ではすぐ隣で飛び込むみたいな感じだったが、本当の噺では離れた場所で石を放り込むので気づかないと言う仕掛けになっている。