異世界薬局・第5話
勅許を得て異世界薬局を開業したものの閑古鳥が鳴く。少なくともあんな立派な店構えでは平民は中に入るのすら出来ないのではないか。その状態を一ヶ月放置するとかファルマは前世が大学の准教授だったから商才が現時点では全く無い。
一体どうしたらとファルマとエレンとセドリックが悩んでいたが三人とも俗世間に疎い。そこでどうやら庶民生活を知ってるみたいなロッテが良い情報をもたらした。外で「アンケート」をしたのだそうだ。こう言う社会水準でアンケートなんて発想があるのか。思わず声が出たよ。
その結果は案の定、店に入りにくいとか、お高そうとか、店主が子供だとか。最低限外に何が幾らなのか看板出せよと思ったけど、この社会水準だと識字率が低かった。それに値段が応相談と言うのはちょっと驚いた。ファルマ、前世日本だって「時価」って店にはホイホイと入れないだろ。アンケート取れる程の知名度はあるみたいだが、それでも宣伝はしないと駄目だ。それは開店当初からやるべき事で、やはりファルマに商才が無い。
そんな異世界薬局に唯一の常連客が居た。ジャンと呼ばれる老人。ジャンは今回も船乗りの飴をくれと言う。何だそれ。ファルマがジャンに言った内容によると壊血病を防ぐ為のビタミンCトローチらしい。いきなりそこに目をつけたか。でもジャンは船乗りなのかと聞かれて言葉を濁して店を出る。そして外で誰かと話していた。うん?ひょっとしてあの薬師ギルドの偵察。でもキャラの作りからは悪人には見えないんだけど。
そこに通りすがりの謎のカップル。
いや、露骨に分かるって。
心配したファルマの両親が様子を見に来たのだ。ブリュノは店主よと呼びかけて異世界薬局の中を見学する。大きな建物だとは思ったが、診療施術施設も持ってる。隔離病棟迄あった。これはもう既に病院。
両親との会話で商売のヒントが出て来た。母ベアトリスからの提案は先ずは貴族向けの化粧品はどうかと。それが貴族の間で流行れば宣伝になる。化粧品からのアプローチ来たか。ファルマは前世で化粧品会社で化粧品の安全性テストをした経験があるのだそうだ。それが無かったら現代日本から転生しても何も作れないよね。私には無理。何も化粧品知識無い。
ここでブリュノからの忠告。化粧品を作るなら白粉だけは作るな。そう言われているからベアトリスは使ってはいなかった。ブリュノの観察によると白粉を使う婦人程早死するからあれは毒性があると言う。ファルマはすぐに気がつく。私も読んだ事がある。昔の白粉には水銀などを使っていて毒性があったと。しかもブリュノによると白い肌を求めるあまりに瀉血をする婦人も居ると言うのだ。
そこに駆け込んで来る者ありけり。当家のお嬢様が倒れて診察をして欲しい。ファルマが馬車に駆けつけると流石に侍女は子供?と驚くが宮廷薬師の紋章があるので入れてくれた。中ではお嬢様が真っ青な顔で苦しそうだった。意識障害は起きていない。早速診眼開始。身体を舐め回すが特に異常な部位が見つからない。診て行くと腕に切り傷があった。自傷行為?いや正確に傷を入れているのでそうではない。
と言う事で、ついさっき言われたキーワードの瀉血へ到達。
取り敢えず異世界薬局へお嬢様を連れて行く。他に病気が無いのに何故瀉血をと思ったら、これまたベアトリスとブリュノが行ったとおりの白い肌を求めるあまりに瀉血をしていたのだ。思いを寄せる相手にふられたが、それは肌が白くないから。だから白い肌を求めてこんな事に。
想い人に好かれたいと言う女性に瀉血は危険だと言ってもまた帰ったらやってしまうだろう。そう言う会話の時にロッテがどうにかならないでしょうかと言う誘導尋問をする。そこでファルマが思ったのは白粉ではない美肌クリームを作ろうと言う事。
先ずは貧血改善と感染症の薬を処方。そして美肌化粧品を用意する事を約束した。
よくもまあ薬学部の准教授が化粧品を作れた。存在だけは知ってるけどクリームとか化粧水とか寝る時の化粧落としとか。
お嬢様=クロエ・ド・シャティヨンはちゃんとした化粧品を貰って、これなら瀉血はしない。こうして貴族も使う化粧品を廉価で販売。評判が広まる。
繁盛したのは良いのだが、繁盛しすぎてクロエが来ても売り切れ。異世界薬局の問題を聞いてクロエからの提案。化粧品部門を独立した子会社(と言う概念は無いのでは)にしてはどうかと。セドリックがこのお嬢様の素性を話した時に実業家侯爵家の令嬢だと言っていただけあって、事業遂行の方はファルマより明るい。資金も出すし、薬師も出せると言うのだ。
たちまち異世界薬局2号店、コスメブランドのメディークが開店。クロエが従業員も集めたと言うけど、これ見た瞬間に貴族のお嬢様が?と思った。
でもこれで薬師なのだそうだ。出産で契約を切られた女薬師を集めた。ああ、今なら普通に再雇用あるのにね。それにしても出産後からそんなに年月が経っていない(若く見える)と言う事は子供は未だ育成途中で、それを置いて薬師の仕事が出来ると言う事はやはり貴族階級なのでは?
EDのキャストでエリザベート二世が出ていたので、あれ?と思ったらCパートあった。
エリザベート二世から呼び出されたファルマは異世界薬局の新製品は先ず自分の所へ持って来る様にと言われる。
取り敢えず今回開発のリップクリームを献呈。エリザベート二世、大いに喜ぶ。
また、例の白粉の件はファルマの進言を入れて禁止の勅令が早々と出たのだそうだ。毒だからね。急いだのだろう。だがいきなり白粉禁止を出されると立ち行かなくなる店が出る。ファルマは美肌クリームの生産技術を開示して国から業界に知らせる方向で非難をかわした。その上でエリザベート二世はファルマの店の薬の値段をもう少し上げろと言う。今のままだと平民の薬局が潰れる。貴族が平民の生活を踏みにじってはならぬと。