異世界薬局・第4話
皇帝陛下への結核治療開始から三ヶ月。ファルマはブリュノと知識交換を始めたと言う。ファルマはこの世界の医療知識とか慣習とか知っておいた方が良いだろうが、ブリュノには何が伝えられるのだろう。取り敢えず結核みたいなのはバクテリアとかの感染症だよとか?
結核の新薬については医薬大学からレシピを教えろと依頼が来てるらしい。そりゃ知りたいだろが、この時代は抗生物質をおいそれと作れる技術は無いよね。何か混ぜれば良いと言う物でもないし。ブリュノさん、事前に察知して適当に理由をつけて追い返した。ただ、ブリュノは薬神からのものだから他の者には作れぬだろうと思っている。まだ化学知識が無い。でもファルマからしたらやがて技術が進歩したら誰でも作れる様になる、それを望んでいるのだ。
そうやって知識の共有をして助かる命を増やしたい、それがファルマの願いだったが、ここでブリュノから危うい情報が来る。知識の独占と利益の独占をしている薬師もいる。だからファルマを異端として排除したい連中もいる。
あと、ブリュノからは白死病を誰かが持ち込んで陛下暗殺を企んだのではと言う話も聞いたが、バクテリアの知識が無かった時代に皇帝狙い撃ちでそれは無理だろう。
ファルマが皇帝の往診に出た後、ブリュノが異端の薬師を思い出すが、彼は何だろう。ひょっとしてファルマがみたいに転生したけど世界に馴染めなかった日本人かもしれない。
ファルマが宮殿に到着したら誰かが迎えた。誰?Wikipediaを見たらノアと言う小姓で有名侯爵の公子とあった。今回の件で褒美もらえるとしたら何が良いかとファルマに聞く。俗っぽい推測をされたが、ファルマは薬局を開設したいと漏らした。これが伝わるんだな。
皇帝は大分元気になって来ていた。今日迄は薬が効いている。でも明日どうなるかは分からない。どんな薬にも絶対はない。でもあの初めての投与の時は絶対と言う口ぶりだったファルマ。あの時はそう信じさせるのが患者への配慮だったのだ。
確かにあの時はもう死に行くとしか誰もが思っていた皇帝の容態だった。皇帝はあれでもう権威が落ちたと思っていた様だが、でもファルマは皇帝を必要としている人は居る、例えば皇子がそれと言って皇帝がこの先生きていく心の持ちようを示す。
それから数ヶ月後。もう皇帝は完治した。
ファルマはブリュノともども宮殿に招かれる。ファルマ、前世は日本の平民だったからちょっとドギマギしてるけど、公爵より上の爵位、最高位の家柄だから何の引け目も無いんだけどね。
皇帝からは今回の件でブリュノへの褒賞。薬草の一大生産地の下賜がある。続いて宮廷薬師見習いのファルマへも。大いなる功績によって見習いから正式の宮廷薬師へ。続いて薬局を開設する勅許が出た。伝わってたんだな。
と思ったら皇帝がせっかちすぎる。もう薬局の建設工事を始めろと言われたらしい。他を色々見てからなんて事をすると工事関係者が皇帝から叱責されてしまう。全然考える間もなくファルマは薬局の図面をひかねばならなかった。どんな形なら良かったんだろうね。私は病気が多いから沢山の処方箋薬局に行った事あるけど、当然ながら全部待合室しか見てない。
工事は順調に進んだ。看板を作るから店の名前を決めろと迫られるファルマ。そうですかそうですか、やっぱり薬屋と言えばファンファンファーマシィーじゃないですかね。なんて思っていたら、ファルマが思わず呟いた異世界で薬局かと言うのがそのまま店名になってしまった。店名でタイトル回収かよ!
良い名前になったわねとエレンがやって来る。そして不穏な話。どんな店名になったところで薬師ギルドとの「全面対決」は避けられないだろうと。え?そんな酷い環境なの?
そしていかにもそのギルド長らしきヒゲのおっさんがやって来た。ファルマを指してそこの坊や、君は従業員かな、店主はどちらだと言っておいて、ファルマが自分だと言っても驚かないので敢えて嫌味を言ったな。
ギルド長のベロンはあなたの様な坊やが売る薬は何でしょうね、飴玉ですか?と言うのでエレンが怒るが、でもファルマは多分トローチは考えていた。だからそれは売ります。
ファルマは用心深く創業には薬師ギルドに加盟しなくてはならないかと聞いたが、ベロンはギルドは平民の物だから貴族の参加はお断りしますと言う。あっちから入らなくて良いと言ってきた。これで束縛は無い。
ベロンはファルマが参加しないと聞いてさぞかしお高い薬を売るのだろうと予想した。でもファルマはそんなつもりは無い。薬で万民を救うのを目的としていたのだから。
安いって言っても貴族が思ってる安いなど平民の感覚とは違うだろうとベロンは文句をつけたものの、エレンから一喝されて逃げて行く。ベロンが知ってるかどうか分からないがエレンもボヌフォワ伯爵家の令嬢だしね。
準備が進んだものの、経理をどうしよう。ロッテが自分は読み書き計算が出来ます、是非おそばに置いてと言って来た。でもファルマはロッテはまだ9歳だからなと。ロッテ、9歳だったのか!
9歳じゃ四則演算出来るだけで経理は無理だよね。でも既に登場した人物にそれらしい人居なかったぞと思ったが、思わぬところから出て来た。
屋敷に戻ったら使用人達の様子がおかしい。みんな何を嘆き悲しんでいるのか。どうやらあの膝が悪いとファルマが診断していたセドリックがブリュノから暇を出されていたのだ。名目上は膝が悪いので家に戻って療養しろとの事だが、突然の事でロッテ達は勿論ブランシュも悲しんでいた。
ファルマは思った。セドリックがフリーになった?まさにセドリックはこれまでド・メディシス家の経理をやっていたではないか。だったら父に許可を貰ってセドリックを異世界薬局の経理に採用したい。ブリュノはあっさり問題ないと言うが、これでファルマは気がついた。さては父は自分の為にセドリックをフリーにしたのだ。
そしてブリュノはさらにファルマに資金を提供。薬局を始めるならまずは資金が必要だからと。父としてこれ位はさせろと。