シャインポスト・第2話
直輝がTiNgSの仮マネージャーになってくれた。まずは今の事務所のライブ会場の100名の入れ物を満員にする事。そしてそれを目指す活動が始まる。ただ、昨日の今日で杏夏も理王も口では強がっているが不安は隠せない。その本心ではない言葉は相変わらず直輝からは輝いている状態で見えた。まあこう言う本心ではない言葉は良いよね。
いつもの様に事務所の会場の前でチケットを売るのを開始しようとした。その出鼻はFFFのライブに来た客にくじかれ、そして雪音と紅葉にそんなんだからいつまで経っても駄目なのだとつっかかれた。この二人、初回にチラと出たよね。印象薄いけど。でもOPを見るとTiNgSと合流するみたい。
ただ単に悪口を言うだけに出て来た訳では無い。実はちゃんとTiNgSを見ていて(ライバル視だろうけど)、三人の欠点を言ってくれているのだ。それに直輝は気がつく。特に春について杏夏と理王「ばかり」を気にした不安定なパフォーマンスと。
気落ちした三人には凄腕敏腕マネージャーからは「精一杯頑張って」とのお言葉。
精一杯頑張って売る姿を直輝は影から見ていた。売れていないけど常連さんが来てちょっとだけ売れる。その中で理王はまっさきにファンが途切れた。そして理王は飽きた休憩と言って逃げ出す。
やっと売れたのは春が15枚で杏夏が7枚。それでも精一杯頑張る春と杏夏。そこに理王が戻って来て合流した。理王の袋からはチラシが無くなっていた。理王は理王で頑張っていたのだ。
直輝には道が見えた。事務所の前で固定ファンに売る。そこまでは良い。しかしここは新人アイドルに興味を持つ人達が通る訳ではない。そこで直輝は電話をした。お願いがあるんだと。
夕方近くなって直輝が三人にお疲れ様と聞いてきた。ここまで売れたのは32枚。100枚には程遠い。うなだれる三人。
直輝は三人を車に乗せた。アイドルに最高の環境を用意するのがマネージャーの仕事だ。10分もあれば完売させてみせよう。そう言って連れて言ったのは神宮球場前。今日はここでゆらゆらシスターズのライブをやってる。そのファンに売るのだ。アイドル業界ではこれは殴り込みみたいなものだろうか。許可は取ってあるのかと聞かれた直輝は既に取ってあると言う。さっきの電話か。
やって来たのは菊池英子。ゆらゆらシスターズのマネージャー。何だか語尾が変だけど。彼女は生粋のアイドル好き。知らないアイドルと聞いては興味しかない。そう「知らないアイドル」なのだTiNgSは。
ゆらシスのファンがライブを終えて出て来る。不安がる春達に直輝は頑張れば売れると背中を押した。それに応えて三人は精一杯頑張って売る。ゆらシスに感謝して。実はゆらシスのファンにはアイドル好きが多い。アイドルそのものが好きな人には新しいアイドルの発掘が好きだ。他のアイドルの会場に売りに来るアイドルに興味を持つ者も多い。7分30秒で完売してしまった。喜ぶ三人。
チケットは完売した。次は今日売った人達にTiNgSを認めて貰う事だ。直輝はTiNgSの練習ビデオを見ていた。まさに紅葉が言ったとおりだった。
翌日、ライブ会場は売れたとおりに人で埋まる。TiNgSにとってはじめての満員の会場。直輝は三人に最後のアドバイス。杏夏はTiNgSを伝えろ、理王は何があっても諦めるな。そして春には昨晩もう言っておいたが、輝きを示せ。
愈々開始。いつもの固定ファン以外のゆらシスから来た客は目が肥えていて、その目でTiNgSの前フリを評価する。まあまあだけどここ止まりかなと。ゆらシスの二人とマネージャーも来ていて、ゆらシスの二人はそこに来ていたファンと同じにTiNgSは中途半端だと思ったが、実は菊は見抜いていた。そう思わせておいてあっと思わせるのが直輝の目論見だと。
そして始まるライブ。始まってみんなの見る目が変わった。直輝が今回ポイントとしていたのは4点。理王の懸命な努力、杏夏のブレないパフォーマンス、春の抜群の観察眼と調整力。これまで春は杏夏とのパフォーマンスを気にして合わせていた。だが直輝は昨晩春に言った。君が気にするのは二人じゃない。観客の方だ。観客の反応を見て舞台をコントロールしろ。そして4点目、今日来た目の肥えた客はそれをちゃんと見抜く。つまりここから噂が広まる。