やくならマグカップも 二番窯・第4話
吾輩は泥である。名前はまだ無い。
あの暑い夏の日、吾輩は土だった。って事はこの河童の置物は姫乃が入った時は未だなかったんだっけ?ずっと予告に出ていたから最初からあったと思っていた。
岐阜県でも有数の陶土層から掘り出された。誇り高い陶土が荒練りで踏まれています。踏みつける荒練りの後に土練機にかけられる。これ、何してるんだろう。そもそも掘り出されてから様々な工程を経ていると言っていた。確かに掘ったままじゃないだろうが。
吾輩は著名な陶芸家ではなくて、若輩者達の所に来てしまう。ここではおでこ娘(十子)しか吾輩を扱うに相応しい者はおらぬ。それに対して黄色くりくり娘に扱われるのは簡便だと思った。その後寝かされる。粘りが出て粒子も小さくなって縮みにくくなるのだそうだ。
寝かされた吾輩がおでこに取り出されて菊練り。良かった吾輩を扱うのはおでこかと思ったのも束の間、十子は三華に吾輩を渡してしまった。恐れていたことが現実となってしまったよ。
完成品はあの置物だと思っていたけど、それにしては土の量はあれで良いのかなと思ったが、確かに中身が詰まったままではないか。細く棒状にしてそれを巻いて行く。自信ありげな三華の言葉に吾輩は期待したが、終わった。終わってしまった。
禍々しい物体に。
あれ、神様だったの?
禍々しい物体になったかと思ったら三華はまた練り直し。四回目だそうだ。姫乃がじゃあ別の土使ったらと言うので吾輩は黄色くりくりが諦めて自分がおでこに行くのを期待したが三華はこれでなくては駄目だと言う。
これは五斗蒔陶土。昔から美濃焼に使われた土で、以前は可児や大萱でも取れたが採掘され尽くして今では土岐でしか取れない。やはりそうか、陶土だって限りある資源なんだよね。
こうしてあの神様の仲間として形は完成。天日干しへ。今日は天日干し日和ねって、空が既にゴロゴロ言ってるじゃん。案の定降ってきちゃった。三華は慌てて取りに戻って自分が濡れたのは後回しで拭いてあげる。そして素焼きへ。
素焼きが終わったら下絵付け。お人形は顔が命。三華が珍しく真剣に目を描いていたが、そこに小泉先生と直子が白玉ぜんざい買って来たよーと飛び込んで来るから三華の手が滑る。ピチャととんだ黒が目の上にかかって、あーあ台無しだよとみんなが思ったのに、三華はこれが面白いと眉毛に。それで太い眉毛あるんだ。
色付けが終わって一晩?おいてから施釉。姫乃の座布団の時は工程がイマイチ分からなかったけど、こう言う順番なんだな。こうして最後の焼き上げ。ちゃんと焼けてねと入れる三華に吾輩も任せておけ、大丈夫必ずうまく行く。
それフラグ。
残念、頭の部分に大きな穴が空いてしまう。十子は流石にこれだけ大きいと修復出来ないと言うが、三華はかわいいと持ち上げる。こうして上は綺麗な穴にして中に土を入れてプランターの置物に。
吾輩の名前は真土泥右衛門。
誇り高き黄色くりくりの作品。