白い砂のアクアトープ・第16話
竹下先生がやって来た。竹下先生ももティンガーラに専属で入る事になった。ペンギンチームに挨拶に来たのだが、それを見た南風原の表情が曇る。竹下先生もどこかで見た様なと言う顔をする。南風原、一体過去に何やったんだ。
ペンギンのどらやきが托卵して35日。そろそろ殻を破って出て来る頃。と言う事で雅藍洞は交代の夜勤で見守る事にする。なんと言ってもティンガーラで初の子供になるので。だが南風原はそれを拒否。いきなりシフトを変えられても困る。自分は夜勤は出来ない。おや?何か特別な理由がある?
竹下先生の子供は今10ヶ月。春から保育園に入った。昨年8月に生まれた子なので今はもう6月か。くくると風花が入社して早くも2ヶ月経ってる。竹下先生は子供と一緒に居たいけれどでも仕事もしたい。だから何とか保育園に入れられてホッとしていた。
風花が自分も忙しくなるんだ、どらやきの卵が孵化しそうだからと泊まりのシフト表を見せるのだが、これがくくるを刺激した。どうして風花とマリナが泊まり勤務があって南風原は無いのか。自分だけ楽して押し付けてるのではないのか。そう思っちゃったら南風原の所へ抗議に行く。一応夏凜が喧嘩しないでねと釘は刺すけど。
案の定喧嘩腰の抗議で言い合いになっちゃったよ。でも南風原が何かを飲み込んで、マリナが自分たちがそれで良いのだからとくくるは引き下がる。
このあと退勤して南風原がどこかに急ぐ。保育園だ。子供居たんだ。竹下先生も子供をあずけている保育園だから顔を見た事があるんだ。そして家の描写でどうやら母子家庭。その日子供は熱を出した。子供ってよく熱出すんだよね。
そんな訳で南風原は翌日お休み。マリナも居ない日で、これだとバックヤードツアーの解説が出来ない。だから風花がくくるに頼みに来たので自ずとくくるには南風原が勝手に休んだと言う理解になってしまう。怒るくくるだが、それを別方向に真栄田が変えてくれる。これはチャンス。ここで飼育の仕事もこなせば異動で飼育部に行ける道が開かれるかもしれない。
と言う事で諏訪にペンギンチームの人手が足りないので手伝いに行きたいと言うが、当然諏訪は却下。自分の仕事があるだろう。じゃあ仕事をした上なら良いですよねと言う事で、それには諏訪は反対しなかった。
ペンギンの案内をこなしてくくるは雅藍洞に泊まり勤務も手伝いますと言う。一旦はそれはと言う雅藍洞ではあったが、風花とマリナだけでは大変だろうと言うので、雅藍洞がここでうっかり南風原に小さい子供が居て大変だからなあと言ってしまった。部長は知ってる。流石に会社組織としては南風原が子持ちと言うのは把握していた。
午後から南風原が出勤。頑張ってるけど、本心はくくるに手伝って貰うのが嫌なんじゃと言うのでここで南風原はくくるがシフトに入ったのを知る。くくると南風原、お互い他の人から話を聞いてしまった。
くくるは反省していた。そこに南風原が怒ってやって来た。何故勝手な事をするのか。他人の家に土足で入り込むな。この揉め事を他の人達が見ていて、空也とかはまた揉めてると言うからこんな事を繰り返してると社内での立場悪くなるよ。
私だって仕事したいのに、私の仕事を奪わないで。
涙ながらに叫ぶ南風原。
この時点では事情を知ってるくくるはしゅんとしていた。
南風原は何故か部長以外には話していなかった。島袋にすら。
くくるは事情も知らずに南風原を責めてそして勝手にシフトに入ったのを反省していた。南風原が怒った挙げ句に悔し涙を流していたのを見て。夜勤の風花に電話で相談。南風原って今でも好きな訳じゃないけど、でもあの人も水族館が好きで、そして一人で戦っていた。それって自分もそうだったじゃないか。だから南風原の事を知りたい。子育てやってみる。え?
竹下先生の子育てを少し代わってみるのだ。美容院とか行けないで居た竹下先生が喜んでそれを受ける。二時間で帰って来るねと出かけた竹下先生だが、居なくなったらたちまち赤ちゃん泣いちゃった。
そして南風原の方には風花。南風原、目の下のくま出来てるぞ。何しに来たのかと言えば、南風原の事を知りたくて来たのだと言う。お互いの事を知って助け合いたいと言う風花にそれはがまがまのやり方かと南風原が言うが、風花はここで引かない。茶化さないで。
南風原は語り始めた。学校を卒業して憧れの飼育員になったのが18歳。そしてすぐに結婚して子供が出来た。でも休みが多いと最初は協力的だった職場の人も冷たくなって行った。ありゃ、駄目な職場だったね。その結果やめさせられて、そしてさらに離婚。だから今はシングルマザー。
こんな過去があったから、人事上の上司には家族構成は言ったものの、他の誰にも言わなかった。またやめさせられるのではないかと言う強迫観念から。そんな状態がずっと続いていたからトゲトゲしてたんだな。
そう言う理由で水族館の館員でいられるのが当然だと思ってるくくるを好きじゃなかったし、助けてもらうのも当然だと思ってるのも好きじゃない。でも風花はくくるはそれと同じ様に助けるのも当然だと思っているし、南風原の大変さを知る為に今頃竹下先生の子供の世話に言ってるよと教える。風花、色々な人の架け橋だな。
南風原は元気になった息子の雫を連れてお披露目。マリナがきゃーかわいいと駆け寄るから謝る間もなく、風花の提案で雫ちゃんに館内の案内をする事になった。館長が勿論OKだよと付き添いまでして。雫ちゃんにママはティンガーラにとってとっても大切な人なんだよと言ってくれて。そう、ここではちゃんと求められているのだ。
これでくくると南風原がやっとお互いの事を少しは理解して、正々堂々と働きましょうと。そしてこのタイミングで嘴打ちが始まったよとマリナからの連絡。
みんなで孵化を見守って無事にどらやきの子供は卵から出て来た。
みんな良かったね。