かげきしょうじょ!!・第11話
紅華歌劇音楽学校の文化祭は本科生の集大成の歌劇が行われる。その合間に予科生のコーラスなどが入る。今回、その予科生の枠が少し広げられて寸劇も入ると言う噂が流れた。うーわさうわさ。この噂は予科生にも流れて安道の演劇の授業の時にみんなの熱い視線が注がれるが、教科書開いてーの声に教室内が大きな落胆で包まれた。
仕方ないなと、安道はその噂は本当だと説明をはじめた。文化祭初日に予科生に10分の寸劇と5分のコーラスが与えられた。だが10分間の寸劇で全員が出られる訳が無い。出られるのは予科生40人の中の4人。4/40だ。内容はあの実技でやったロミオとジュリエット。前回と同じく、ロミオ、ジュリエット、ティボルト、乳母の4人。
配役は誰が決めるのか。それはオーディション。投票は自分達がする。自分以外の良いと思った者の名前を投票する。恨みっこなし。
風呂に入りながらいつものメンバーが何をやりたいか語り合っていた。紗和が今度はティボルトもやってみたい、星のティボルトに萌えたと言うと、薫がそんな甘い理由なのかと言う。これはチャンスなのだ。この先、上層部が配役を決める。お客様も誰が何に合っているか期待する。だから確実にそれを掴んで行かねばならない。薫はここでロミオを演じ、そして上へ昇っていくのだと宣言。
彩子が例によって弱音を吐くと薫が例によってそれを糾弾。沢田姉妹が言い過ぎだよ、誰もが上を目指す訳じゃないんだから、でも私は上を目指すけどね!と。これには彩子とて私だって上を目指すんだと言う流れに。
その時、さらさがさっさと湯から上がる。モタモタと湯に浸かっている暇などないのだと。煽るなあ。
とは言えさらさは迷っていた。ティボルトだろうかロミオだろうか。ティボルトは前回の実習の時に安道からダメ出しをされていた。星のコピーでしかないと。それは皆も見ていた訳で、そのイメージが残って投票に不利。愛はさらさはロミオが良いと言う。何故ならロミオはあまり考えずにジュリエットをひたすらに愛する。対してティボルトは複雑な役。それってさらさが単純と言う意味?それはおいておいて←否定しない。
愛はまた見てみたい。あのはじめて授業として舞台を見に行った帰りに見せたさらさのロミオを。確かにさらさは太陽のイメージで、それはロミオの方が合ってると思う。
愛の言う事には納得感があった。
愛は聖から噂は本当だったんだ、奈良田さんはジュリエットだよねと言われたが、表情が硬いからジュリエットより乳母だと答えると、聖は言下にそれを否定する。バカじゃない。今は未だ有象無象の100期生の中でお客様が観たいのは元JPXの奈良田愛ただ一人。
でもそれは実力ではないと言う愛に、実力なんて後からどうにでもなる。でも持って生まれた美しさはそうは行かない。愛は既に他の誰よりも先にスタートラインを持ってる。そこから全力疾走で駆け抜けてトップを狙えばよいのだと。
愛からああ言われたものの、未だ悩んでいるさらさに暁也から電話。SNSで悩んでるのを書いたらしい。暁也は後悔しない方を選んだら良いと言うが、じゃあロミオと思ったさらさに、言い方が違ったと暁也はやりたいのをやれば良いと言い直した。ロミオが良いと言われたのに迷ってるんでしょ。それはそう言う事なのだと。
こうしてオーディションエントリーの日。各々が黒板の希望の配役の所に名前を書いて行く。沢田姉妹は勿論ジュリエット。彩子もジュリエットを選んだ。そして愛も。紗和はティボルトを選んだ。それを見てホッとする薫。そしてさらさの番。ティボルトを選んだ。リベンジだと。
さらさは紗和にお互い頑張りましょうと手を差し出すものの、紗和は握手はしない。紅華歌劇団は団結の美しさがあるが、今回ばかりは違う。紗和が本気出した。その陰で愛は先ず台本に読みがなをつける所からはじめた。
ティボルトを選んだものの、さらさ独自のティボルト像に悩む。基本形から様々なバリエーションを愛にやって見せるものの、セリフは変えちゃダメ。オリジナリティを求めてセリフまで変えちゃう。そのさらさに個性を押し付けるのは良くない、その役がどんな役なのかを先ず確定しなくちゃいけない。個性はその上で役者から滲み出る。
金言いただきましたと言うさらさに、自分もある人から聞いたのだと言う。実は愛が幼い頃にTVを見ていた愛の母が言ったのだ。そこに出ていた役者が私が私がと言うのが鼻につくと。こう言う女優はすぐに飽きられる。
ティボルトは朝どうやって始まるか。死ぬ時どんな気持ちなのか。
なるほどと思ったさらさ。一体これを誰から聞いたのかと聞くと、愛は「女優さん」と答えた。「女優さん」なのだ、母は。あんな事件を起こしたからね。
こうして各々の練習が始まる。さらさ、掃除の最中にやるものだから、リサが何事かと思ったけど、ティボルトの練習と知ってサボるなと。
オーディションが翌日だと言うのにさらさは未だティボルトの気持ちを掴んでいなかった。思い返せばさらさは人を恨んだりした事が無いと言うのだ。ところがTVに暁也が映っているのを見て思い出した。
あの「お前は絶対助六にはなれない」と言われて稽古に行かなくなってからの日。建じいは怒ったものの、子供同士が遊ぶのはそれはそれで勧めていた。だが、稽古の時間が来て暁也が帰ってしまうとさらさは不満を漏らす。そして言ってしまった。暁也は怪我して稽古出来なくなればよいのに。
すかさず建じいが激しい剣幕で怒る。そんな事を言うもんじゃない。それは全部自分に跳ね返ってくるのだと。
あの時思ったのだ。自分が絶対なれないものに当たり前の様になれる暁也に妬みを持ったのだ。そんな時があったのだ。
こうして始まるオーディション。安道の他に4人の先生が審査に参加して票を入れるという。これを予想していなかった生徒達が怯む。
そしてランダムに選んだ四つの配役の候補が前に立って劇をする。最初のグループに愛が入った。まずはロミオの上田真奈美のセリフから。上田はセリフをミスって一度やり直し。みんな不意打ちでガチガチになっていたが、愛だけがいつもの表情。流石JPXで舞台を踏んでいるだけの事はあると皆は言うが、さらさはいつもと違うと見抜いていた。
ロミオのセリフが終わったらジュリエットのセリフ。愛はさらさにドヤ顔で役に寄り添えと言ったのに、恋とは何なのか分からない愛こそが寄り添えませんでした。
そうこうするうちにジュリエットの番が迫っている。その時だった、あのオタさんの事件の時のさらさを。そしてロミオのさらさを。そしてさらさと友達になりたいと焦がれたではないか。焦がれる気持ちが分かった愛。
愛のジュリエットが弾ける。
沢田姉妹が感動したよと愛に言葉をかけていたが、愛はあっちの世界へオーバーヒートしていた。さらさのポンと叩く手で戻って来る愛。おかえりなさい、愛。
化粧室でまたも愛の演技に気圧されしたよと言う彩子。そしてまたも薫が言う。いい加減にして欲しい。この期に及んで、誰もが思っても口に出さないのだ。そう、それは薫も入るって事だ。
次のグループは彩子がジュリエット、紗和がティボルトだ。
これあと二回でどう話を区切ってまとめるんだ。