白い砂のアクアトープ・第10話
櫂は幼い頃に泣いて震えるくくるの背中を見ても何もしてやれなかった。何の場面だろうか。やはりくくるが両親を亡くした時だろうか。
そして今。くくるが背を向けて見ているのはカレンダー。もう8月末まで一週間になってしまった。がまがま水族館存続の道は今尚見えていない。
それにしても櫂は確か漁に出るのが無いから手伝いに来てるとか言っていたと思うけど、出てるよね。早朝に一度漁に出てから。
もっとも今の状態では閉館待ったなしで、空也もうっかりそれを前提にした事を口走ってしまうし。くくるは一発逆転の何かを求めている。一発逆転に望みをかける様になるとそろそろ危ない。
一発逆転を賭けてカメーでうどんちゃんのお母さんに占いして貰おうとくくるは風花を誘う。風花の表情が浮かないなと思ってたが、あのルカからの電話はJPXの映画を撮るにあたって若手注目監督が風花を採用したいと言ってきたと言う連絡だった。ああどうかな。一見これはって話だけど、そう言うのって行ってみたらこんな筈じゃなかったと言うのが多いから。でも風花は迷うよね。お返事の期限は夏休みが終わるまで。
カメーに相談へ。この日はもう一日経っていて一週間を切ってしまっていた。占いの結果は今は迷いの時期。焦って新しい事に手を出すと裏目に出る。ダメじゃん。占いの場にあった2004.7.7ってくくるの誕生日かな。さつきのアドバイスは今は自分に何が出来るのかを見慣れた景色を見直せとの事。
これを言われてくくるが思い出したのは水槽の幻。水槽の前で見る幻。うどんちゃんは食いついて来たが、夏凜は流石にそれで観光協会が宣伝する訳には行かないと言う。
やはり櫂は無理してる。家に帰ったら早々に寝てしまって真帆からはくくるの為に無理しちゃってと言われた。くくるより風花と付き合っちゃえと言われて、風花は夏休みが終わったら岩手に帰るんだぞと言われた真帆はここで風花が居なくなっちゃうと言うのを知る。
風花が居なくなると言うのは、もっと切実で、風花の気持ちが虚ろなのをくくるが気がついて聞いてみたら映画の主役にしたいと言う監督が居るのだと明かした。くくる動揺。だってもしがまがま水族館が続いても風花はいなくなっちゃうかもしれない。
焦ったくくるが占いで裏目に出ると言われていたのにやってしまった。gamasui_officialのアカウントで例の水槽の幻の「奇跡体験イベント」を計画中と書いてしまった。それを前提見た夏凜、流石にこれはまずい。バズってないのが不幸中の幸い。
公式で奇跡体験イベントとぶちあげてしまったので、幻を確実に見られる実験をしなくちゃと実験に付き合う人を思い浮かべるくくる。うどんちゃん、夏凜と思い浮かべて、風花で止まるのは良いとして、目の前に出て来るまで思い出して貰えない櫂君。
この夜は櫂を誘って幻を体験する実験。でもわざわざ頑張ると出ないんじゃないかな。そしてやはり幻は出て来ない。帰りがけ、風花も居なくなっちゃうし、生き物たちも移管先へバラバラになっちゃう。
あいつの背中、また震えていた。
(また何もしてやれなかった。)
家に帰ったくくるにおじいが言う。年の功か、例の奇跡体験イベントの事で全然問い詰める言い方じゃない。でもがまがま水族館はそう言うのが無くても素敵な所でしょうと。
そう言われてもくくるはがまがまを無くしたくない。それをおばあが風花に教えてくれる。両親を亡くした頃に家に帰るんだと泣くくくる。そんなくくるを癒やしてくれたのががまがま水族館だった。だからくくるにとっては特別なのだ。
それを聞いて自分は今何がしたいのかと振り返る風花。ここで一杯元気を貰っていたのに、自分はどうしたらいいのか(映画に出て良いのか)。
くくるに今回も声をかけられなかった櫂は未だ水族館に居た。水槽の前であの時も今も何もしてやれなかったと。そう言う悩みを抱えた時にアレは出現する。水に包まれた感覚の中で幼いくくるが泣いて外に飛び出したあの日に戻る。震えている背中を見て立ち尽くす幼い自分に櫂は背中を押してやった。行け!泣きじゃくるくくるに幼い櫂は魚を差し出した。
見えていた、幻。でも家を飛び出して水族館に戻ったくくるは櫂の様子を見てもしかしたら見えていたのかと問うが、櫂は見えていたとは言えない。その代わりにくくるの気持ちをぶつける相手になってやる。それが今の櫂に出来ること。
思い直したくくるが公式アカウントで奇跡体験イベントは中止と書き込んだ。