本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません 第二部・第4話
マインが食事をして余った分を神の恵みとして孤児院に分け与える。フランがそれを持って行った後でギルが入って来てパンもこんなに余ったと言って来た。それじゃそれも孤児院に分け与えましょうと言うとギルは喜んだ。
ギルが孤児院にパンを持って行くのにマインは一緒に連れて行って貰う事にした。孤児院はどう言う所なのか見てみたかったのだ。孤児院の食事をする場所は女子棟の地下にあると言う。男女で一緒に食べるのだ。でもその入口は外から閂がされていた。マインはこれを見て悪い予感がする。
開けて中に入ってみると暗くてすえた匂いがし、痩せこけた子供達が横たわっていた。そのうちの一人がマインの服を引っ張る。思わずマインは払い除けて、そのまま倒れてしまった。マインの身体は弱いからなあ。
部屋に戻って気づいたマイン。ギルはあんな場所に連れて行くのが悪いとデリアに叱られたが、ギルが居た頃はあんな状態ではなかったのだそうだ。デリアが孤児院を出たのは一年前。その時でもかなり状態が悪かったのがこの一年で一層悪くなっているらしい。
青色神官が還俗して数が少なくなって、灰色神官も減らされて、その結果として孤児院には物が届かなくなっていたのだ。自分の居た孤児院を何とかして欲しいとギルはマインに懇願する。マインの今の立場では何も出来ないので、神官長に相談する事にした。
そして神官長に会っていきなりこの話を切り出したマインだが、神官長は全く聞く耳を持たずに却下。取り付く島もない。そんなにどうにかしたいのなら自分がやったらどうかと言う神官長。どう言う事かと言うと、誰もなりたがらず空席になっている孤児院の院長にマインがなって、マインの金で孤児たちをどうにかすればよいと。院長になって責任を負えと言うのだ。
マインには確かにお金はある。しかしそれはマイン工房のお金であって、自分の好き勝手に仕えるお金ではない。ちゃんと会計を別にしてるんだね。現代社会でも中小企業ではこの辺の区別をちゃんとしていない会社が結構あったりして、騒動になる。
金も出せない、責任も負えない、そんな事なら口を出すなと神官長から突き放された。そう言うマインを冷ややかに見るどこか誰かの青色神官。
部屋に戻って神官長の仕打ちに気落ちしていたマイン。フランはもう孤児達の事は忘れましょう。気晴らしに本でも読んではと言うが、こんな気持で本は読み続けられない。
迎えに来たルッツにマインはこの気持で泣きついた。話を聞いたルッツは、だったらその孤児達をみんなマインの側仕えにしてしまえば良いと言う。そして資金の問題は、マインの側仕えになった孤児達にマイン工房の仕事をさせれば良いと言うのだ。それならそれによって利益が生まれ、当然の対価として孤児達にお金か食料を提供出来る。マイン工房の孤児院分室を作れば良いと言う。それか、それがあったかと喜ぶマイン。
とは言ってもこんな大胆な施策をいきなりは出来ない。ベンノに話したらまた面倒な事を始めると言われたものの、植物紙を量産出来るので反対はしない。だがマインがさっそく神官長に会って話を言い出すとベンノが怒る。そんなに直接的に言ってもダメだと。
貴族の世界では表立っていきなり話を切り出してもダメ。先に根回しをしておいて、話がついたところで切り出す。まあ、会社でもちょっと似た事してるなあ。先に担当者に打診して、可能そうなら改めて上を通した依頼にするって感じで。えー、と思うマインにフランもそのとおりだと言い、そこはフランが神官長に根回しをすると言う。
こうして根回しが済んでマインは神官長と面会して孤児院の院長就任を認めてもらう手はずとなった。
「ここで話をする」
「ベッドで!」
ワロタw
実際にはそのベッドの奥にある壁に隠された扉を魔法で開けて中に入って神官長とマインの二人だけで会談をするのだ。他に誰も入れず誰にも聞かれない。
先日、大勢の居る場所でマインがあの事を切り出した時は神官長は命が縮む思いをしたと言うのだ。孤児院批判は神殿長の方針批判そのものだ。あの場には神殿長の灰色神官も居たし、神殿長寄りの青色神官も居た。そこで神殿長批判をしようものならあっと言う間に揚げ足を取られてしまう。もっと警戒すべき相手は誰なのか覚えておけと言う。
神官長はマインに尋ねた。基本的に他人に関心が無い君がどうして孤児達の面倒を見ようと思ったのか。マインは即答する、本を読みたいから。
神官長、全然意味が分からず呆然w
分かる様に話せと言われて、マインは孤児達があの状態だと気になって本がまともに読めない。だから孤児達にちゃんとした生活を送らせて、自分は安心して本を読みたいと言う。頭を抱える神官長、君は想像以上の馬鹿者だ。
そう言われてこれは孤児院の院長就任はダメかなと思ったマインだが、神官長はマインの院長就任を正式に認めると言う。礼を言うマインだが、貴族の女性の言葉遣いがなっていないと言って、言葉遣いを教える巫女も必要かと呟いた。
そんな神官長にマインはどうして神官長は他の神官達と違うのか聞いてみた。フランから神官長は実は孤児院の状態に心を悩ませていたと聞いていた。あの場では却下されたが、それは他にそれを聞いていた者が居たから。二人だけで話をして神官長はマインに任せる事にした。それは何故か聞いたのだ。神官長は、自分もマインと同じ様に外からこの神殿に来たからだと言う。外様で神官長になったって事はそのツテが強力だったのだろうか。
戻ってギルにこの話をするとギルは涙を流して感謝する。ギルは本当に孤児院の子達を気にしていた。そしてそこにやって来たデリア。神殿長には黙っていてあげるが、絶対失敗するなと。デリアだって孤児院で酷い目に遭っていたからね。
神殿長には「マインに孤児院の院長を引き受けさせた」「そうか、あんな面倒な物を押し付けたか」と言う話になるのかな。で、蓋を開けてみたら「なんだこれは」となりそう。