荒ぶる季節の乙女どもよ。・第9話
泉が出る7:30丁度に間に合わせる為に朝食のトーストも抜きで家を出る和紗。文化祭の恋の伝説で両想いになれて天にも昇る心地とはこの事か。それは和紗だけではなかった。あんなに男子に対して敵意むき出しだったり香も同じで、裏ではやることやっていた。
恋の果実を知ってしまったり香にはそんな非難は全く効かない。男子に対して我々は思い違いをしていただけなのだと。滔々と語るり香の様子にこれって惚気を聞かされているだけかとこぼすひと葉に多分その通りと返す山岸先生。でも同じ境遇の和紗だけは全面的に賛成してくれた。新菜を横において。
り香と和紗は「勝ってる人」だから今や周りの事を見る事が出来ていない。しかし文学は往々にして「負けている人」が生み出せると言う話を山岸先生から聞いたひと葉、だったら自分は今良いのが書けそうだと。そして富多先生が好きなのかとズバリと聞いた。ひょっとしたらひと葉があれを見てそう思い込んでいるだけなのかもと思っていたけど、山岸先生の動揺はこれは完全に惚れているな。ひと葉がデブだと言うとムキになって否定するし。
帰りがけに百々子が新菜を誘う。話があると。あのキャンプファイヤーの時の新菜と三枝の話を聞いたと言うのを明かした。その上で新菜は和紗から泉を奪うつもりなのかと言う。そう言う意味ではないとしても、でもやろうとする事は傍から見たらそうなのかもしれないと答える新菜に、友達を失ってまで泉が欲しいのかと迫る百々子。私達を選んでくれたらオマケだってつけてあげると言う百々子の言葉にその必死さが現れていた。だって、オマケなんてこの選択には何の関係も無いのだから。それに新菜は明確な答えを出した。
「でも友達とはえすいばつ出来ないでしょ」
選ばれなかった百々子。
同じ頃の帰り道、泉は和紗にうちに寄っていくかと聞いた。うちに寄っていく、これは今迄は特に意味を持たなかった。でも今は違う。二人だけになってお互いどうしたら良いのか戸惑い、座る場所すら深く考えないとならない。座った後でどうしたらいいんだろう。触れ合った手をつないでみた。その後はどうしたら。でも悩んでいるうちに泉の母親が帰って来た。
翌日、ひと葉から文化祭が終わって一息ついたので今日は個人個人で朗読用の本を選ぶ事にしないかとLINEが入る。つまり今日は部活しないで帰路に本を探すと。百々子と和紗はじゃあ一緒に帰りがけに本屋に寄ってみようかと話したものの、和紗はもうひとつ百々子にお願いしようかと悩んでいるものがあった。それは泉とあんな雰囲気になったので勝負下着を選ぶのを手伝って欲しいと言うもの。
でも買い物と言う言葉に百々子は別の事を考えた。新菜と一緒に行きたいのか、告白前にどんな事があっても新菜とは友達で居られると言ったのは本当なのか、そもそも新菜が泉を好きだと言うのは誤解じゃないのか。百々子は和紗と新菜が泉を巡って争いになる事態を否定したかった。
新菜は浅田がすっかり元気なくしていると言うのを泉に話した。和紗と泉がくっついたのを知って何かちょっかいを出すかと思ったのに。それにしてもり香と駿の件はあんなに派手に行われたから知られているとし、ひっそりと行われた和紗と泉の事まで知られているのかと思った泉だったが、新菜に言わせれば恋の伝説で結ばれたカップルの名簿が出回っているのだそうだw
和紗とこれからどう付き合っていけばよいのか悩んでいる泉に、新菜は今日一緒に電車に乗ろうかと言う。お誘いです。一応、形としては恋の相談の。こうしてこの日は新菜と泉が電車に乗って帰る事になる。
一方、部室に来ても誰も居ないので今日は部活無しなのかと思った山岸先生に、ひと葉がこれは自分の策略で今日は誰も来ない様にしたと言う。そして言うのだ。ミロ先生の告発本をだそうかな、山岸先生自体は何とも思わなくとも、富多先生はどう考えるのかと脅迫する。一回だけ抱いて貰ったら忘れてやると言うひと葉。山岸先生はまたしょうもない事をと思っただろうか、だったら後で学校裏の公園の前待っていろと答える。
駿の部活が終わるまで図書室で朗読会の本でも探そうかと鼻歌交じりのり香だったが、それを見つけたのは園絵。園絵は本を探していたのだ。
「黄色い髪の男の子が丸い星みたいなのに乗っかっている」本を。
それ、どう考えても「星の王子さま」。
でも「星の王子さま」って読んだ事がなくて内容知らなかったな。一緒にいたバラと王子さまの話だったか。王子さまにバラとの関係性を自覚させたのがキツネ。丁度同じ頃、新菜は泉にこの本の事を話していた。三枝が文芸部の君に面白い本を教えようと言ったのはこれだったか。そして三枝は付け加えた。君はこの本のキツネだ。本の内容を聞いた泉は言う。俺にとってのキツネは新菜だと。以前、和紗は泉と新菜に同じ事を言われて心乱した事があったが、今度はこっちか。
電車はコンサート帰りの大勢の乗客でいつもと違って混雑する。その時、新菜は泉にLINEで告げて来た。後ろのサラリーマンにお尻触られていると。何ぃ!?といきり立つ泉に新菜は手を伸ばしてこうやってガードしてと自分の尻を触らせる。本当に誘ってるになってしまった。
ひと葉の方は山岸先生の車に乗り込む。何か掴んでいたなあとは思ったが、乗る直前に捨てたのはぱんつだった。最後に行動の予測が簡単につく面白味の無い女ではなく、おもしろがらせてやろうじゃないかと。でも捨てなくても、かばんの中に入れてもいいんじゃ。