宇宙よりも遠い場所・第12話
あの日、急に学校で呼び出された。報瀬は母が行方不明になった知らせを受け取るものの、その実感がわかず帰りを待つ日々が始まったのだ。
「Dear お母さん」
行方不明と言われてもメールを出す報瀬。しかしまさかこのメールが最後の途方もない演出に繋がっているなどとはこの時点では夢にも思わなかった。
天体観測所の設置場所へ雪上車へ行く民間南極観測隊。そこは母貴子が行方不明になった場所だ。マリ達も行くかと言われてみんなは素直に喜ぶが、報瀬だけは迷いがあった。
オゾンホール観測気球の打ち上げレポにも報瀬は来ない。それにしても毎日二回上げてるの?来なかった報瀬を気にしてマリが様子を見に行くのだが、かける言葉が見つからない。

報瀬はマリがそうやって気を使ってくれた事で今の気持ちをみんなに話した。母の痕跡に会いに南極に来た。色々無理をして南極に来た。でも到着して感じたのは写真で見たのと同じ南極だった。そしてさらに行方不明になった場所に行って、何も無かったら今のこの状態はそのまま続くのだろうか。そうなってしまうのが怖くて天体観測所設置場所へ行くのを躊躇っていたのだ。
そう言う訳で報瀬をこれ以上どうこう出来ないでいた三人だが、鮫島に言わせればそうやって黙って見ている事が出来るのもいい友達だと。それを聞いた結月がとても喜ぶ。前回もそうだったが、友達関係にあこがれていたから。

迷える報瀬は藤堂に聞いてみるが、それを他人に相談する事じゃない、だってあなたは自分で今迄貫いて来たのでしょうと。部屋に帰って報瀬はシンガポールの後の100万円の残りを数えていた。これを貯めるのにどれだけの事をしたのか。
そして決意した。内陸へ進むのに。
最後の旅をする事を。
雪上車でゆるゆると進む遠征隊。時速5kmか。引きずっているのは燃料か。晴れてはいるけど内陸に進めば進むほど寒さが厳しくなる。昭和基地みたいには行かない。晴れていても厳しいがブリザードが吹くと雪上車の外は死の世界。貴子は基地から戻る時に行方不明になった。
こうして南極チャレンジ天体観測所に到着。取り敢えず望遠鏡を設置してみる。でもまだまだ。建物を建てて「小淵沢天文台」が出来るのは未だ先。見上げる藤堂、貴子を思い出しているのだろう。それを知ったマリ達三人は走り出した。一体何をするんだと思ったら、1次隊が残した施設の中を片っ端から探して報瀬の母の痕跡を求めたのだ。凄い勢いで探す三人。見つかるわけないと言う報瀬に三人はいいわけないと探しまくる。
その時に日向と結月が何かを見つけた。マリが氷をのけてみると報瀬と貴子の母娘が写った写真。この時はポートレートかなと思ったら、それはノートPCの天板だ。ノートPCを開いて恐る恐る電源を入れてみると起動する。そしてログインパスワードに母の誕生日を入れても通らなかった報瀬は今度は自分の誕生日を入れるとログインに成功。
起動したメールソフトはメールの受信を開始した。
一通目「Dear お母さん」
ニ通目「Dear お母さん」
三通目「Dear お母さん」
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どんどん報瀬がこの三年間出したメールを受信する。南極で凍結されていた母のノートPCの時間が動き出す。報瀬が送ったメールとともに。どんどんどんどん受信してとうとう報瀬の誕生日の1101通にまで。
受信する毎に溢れる報瀬の涙。漏れる母を呼ぶ声。

いやね、これ、視てる方だって涙が溢れるよ。なんて演出だ。
マリ達だって外でそれを聞いて大泣きに泣く。



