恋は雨上がりのように・第3話
「店長の事が好きです」
「そっかー、いやあよかったー」
何が間違っていたのかw
全力疾走したせいで炎症を起こして一時松葉杖となっていたあきらだったが、今ではもう普通に歩ける迄には回復していた。そんなところを陸上部時代の後輩に見つかってフォーム見て下さいよとトラックに引っ張って行かれた。しかしやりたいのにやれないのを見せられるのはどうなんだ。しかもその後でファミレスに行きましょう、そうだ先輩はファミレスでバイトしてそうでそこに行きましょうとか、どんだけ無神経なヤツらだ。まあ高校生なんだけど。
あきらは自分のバイト先のファミレスに行こうなんて言われて速攻でダメと拒否する。拒否して、遠いからと付け加える。
あきらはそのままあのガーデンの方へ。グラウンドに居る時から空模様が怪しいとは思っていたが、途中で雨が降り出して雨に打たれたまま事務室の前に佇む。近藤がそれを発見。なにずぶ濡れになってるの!と取り敢えず中に入るのを勧めるが、あきらはここでまた繰り返した。
「あなたの事が好きです」
流石の近藤もあのベイエリアのファミレスでの「好き」の解釈と今の「好き」が違うんじゃないかと言う事に気が付く。え?と戸惑っているうちにあきらは去ってしまった。残された近藤、なんだったんだ今のはと悩む。そりゃそうだ。
だって45歳のバツイチ子持ちのおっさんに17歳の女子高生が「わーい、店長の事、好きでーす」みたいなノリとは違う「好きです」を言われたってどう解釈して良いのか分からない。
挙げ句の果てに一番合理的な解釈としてドッキリなんじゃないのかと。あのタカシがどこかに隠れていてカメラで撮っていてみんなで笑ったんじゃないかと。女子高生が真剣に好きですといきなり言うのよりは確かにこっちの方が合理的だと私も思いますよ、普通に考えたら。だから、なんて酷い事をするんだーと悔しがる。
一度はそう思った近藤だった。だが、あきらが復帰して改めて店長が好きなんです返事を聞かせて下さいと言うのだ。
ドッキリじゃなかったの?そんなタイミングでユイがタカシの歓迎会やるから来てとあきらを誘いに来るので、その話が一旦中断されたが、あきらは行かない・・・足の具合が未だ完全じゃないからと弁解して追い返す。と言う事で近藤は好きですの告白にどう向き合うのかが問われる。
ちょっと話をしようとあきらを車に乗せて外に出た。近藤、逃げずに一応ちゃんと話をしようとする。近藤はどうしてと理由を聞く。あきらからしてみたら人を好きになるのに理由なんて無いと。それはそれで至極もっともな話。でもそれは年齢の近い者同士なら或程度無条件に言える話で、45歳と17歳ではそうとも言えまい。少なくとも世間は。
車を降りて外で話を進める。蝉の抜け殻を見ながら近藤は思うのだ。45歳、夢も希望もない。空っぽの中年。それがどうして。いやいや雇われとは言っても店長やってるんだから夢も希望もないとか言うな。それに子供が居るんだぞ。
近藤はふと思い出す。自分も高校生だった頃のあの暑い夏を。
だから何となく言ってしまうのだ。僕と。
いつも俺と言う近藤が僕なんて言ったものだからあきらは吹き出す。
もし俺とデートしてごらんよ、きっと気持ち悪いよと。
ところがデートしてくれるんですか食いついてきた。
「いや、それ反実仮想法だよ、高校で習うよね」
とは答えられない近藤であったw