恋は雨上がりのように・第2話
店長からのお知らせです。今度厨房に新しいバイトが入る事になりました。
って、お前は吉澤じゃないか。ストーカーして来たのか。まあこれだけ本気の男子高校生では仕方ないかもしれない。
この時間帯、客が少ないので手持ちぶさただったあきらとユイがときめく物列挙を始めた。ユイ、甘い食べ物ばかりあげていくが、厨房の二人はJKフィトンチッドとか言って癒されている。あとから佳代子が福利厚生とか現実的な物を挙げるが、私なら「不労所得」かな。
あきらとタカシが知り合いと言うのを知った近藤はそうかそうか二人はおつきあいしてるんだなと思ってしまう。
ある客が会計を済ませた後をあきらが片付けると、シートにスマホを忘れているのを発見した。近藤が外に追いかけたものの、自転車だったので店長は「取りに来るだろう」と諦めたが、あきらが諦めない。あの先の信号で多分止まる。なら追いつける。そう、あきらは陸上のエースだったのだ。近藤からスマホを受け取って綺麗なフォームでダッシュ。
え?アキレス腱は大丈夫なのか?と思ったのだが、スマホを届けるのには成功したものの、戻って来てから倒れてしまった。
驚いた店長はあたふたした結果、自分の車で病院へ連れて行く事にした。自力で立ち上がれないあきらを近藤は意を決して肩を支え腰を支えて車に乗せた。
あきらはかかりつけの病院があると言うのでそこへ連れて行って貰い、医師は慣れているから足見せてと言うものの、近藤の居る前で足を出せないあきら。それを知って近藤は先に店に帰る事にした。
この時、あきらが逡巡したのは何だったのかな。医師は傷を見られたくなかったのかと言ったもののあきらはそうじゃないと言っていた。私はそもそも近藤に素足を見せるのが恥ずかしいのかと思ったが、最後にペディキュアが登場したので、ペディキュアしてない足を見せられないと言う乙女な理由だったのか。
アキレス腱をやられた足での全力疾走はやはり結構な代償があって、炎症ではあるものの松葉杖での歩行となった。これでは接客できないのであきらは帰る事になった。近藤の姿を見ながら。
部活も無い、シフトも無い、とベッドの上で暇をかこつあきらはコンビニに買い出しに行くかと松葉杖で外に出た。あきらの家ってみなとみらいの近くか。ふと見ると近藤の姿が。大切な娘さんに怪我をさせてしまって申し訳ないとあきらの親に挨拶しに来たのだ。しかし今時こう言う市街地だったら住所から先にストリートビューで道順と建物を見ておかないか?
母親は出かけていると言うので、二人で近くのファミレスに入る。軽い怪我だと言われた近藤は本当に大丈夫?とあきらの足を見たら指先を見てまさかあの時に足を痛めてこんな色に!と驚く。それはペディキュア。でも私みたいなおっさんがそれを聞いたらプリキュアにしか聞こえない。血豆と勘違いした近藤をあきらは笑う。
ドリンクバーを頼んだ店長が戻りかけた時に窓の近くで腰掛けているあきらを見て何かデジャヴを感じた。
そしてあきらはとうとう言った。
店長好きです。
それを聞くと近藤はよかった、嫌われている訳じゃなかったんだと喜んで注文を追加。
好きって、まあ中年の謂わば「さえない」と見られているおっさんが高校生から好きですと言われたらそう言う意味に取るよね。