宝石の国・第7話
「おまえ!何をしていた!」
そうボルツに怒鳴られたフォスフォフィライト。アメシストは無事に回収されてルチルによって修復された。フォスフォフィライトはそこに平伏して「ごめんなさい、怖くて動けませんでした」と謝る。
しかし今回の後の場面を考えると、フォスフォフィライトに何が出来ただろうか。アメシストの双子はフォスフォフィライトにちゃんとした所を見せられなかったと言って全く怒らない。それがかえって辛いフォスフォフィライト。
フォスフォフィライトは何も出来なかったのを悔いて走る。逃げ出す様に走る。走ってシンシャの所へ着いてしまったが、今は何も言えない。合わせる顔が無いと隠れてしまった。
さて、冬が来て雪が降り、宝石達は寝衣を纏う。
なにこのかわいい子達。
なにこのかわいい寝姿。
冬眠に就く宝石達に替わってアンタークチサイトが起きて来た。起きて来たと言うか気温が下がって結晶化したのだ。冬の間はこのアンタークチサイトと金剛先生の二人で月人の襲来に備える。冬は天候がずっと悪く、晴れの日は十日間程度しかない。月人はその晴れた時しか襲来しないので、迎撃しやすいのだとか。
起きてきたアンタークチサイトに金剛先生はまた冬の間一人で寂しいだろうが頼むよと言うが、大丈夫ですと答えた代わりにアンタークチサイトは金剛先生に甘えるのを望む。
しかしこれをフォスフォフィライトに見られるのだ。何故かフォスフォフィライトは眠くならなかった。いつもだと真っ先に寝て一番最後に起きるのに。
フォスフォフィライトはアンタークチサイトに一緒に仕事をさせてと言うが、嫌だと断ろうとしたアンタークチサイトに対してさっきの場面を言挙げしてアンタークチサイトの同意を取り付けた。
アンタークチサイトが冬の間にやっている事。それは基本的に皆の安眠を確保する事だった。実はあんなかわいい寝姿なのに、宝石達はあのまま静かに眠っている訳ではなく、寝相が悪い。特にボルツ。その場合、布を被せると何故かおとなしくなる。たまに金剛先生も眠くなって頭を壁に打ち付ける。この時も布を被せる。大きな音がした時、例のアメシストの双子が頭をぶつけあったかと思ったよ。
そして外回り。雪が結構積もっている。そこをラッセルして歩いて行く。太陽光が少ないからフォスフォフィライトの体力気力がすっかり落ちていて、アンタークチサイトに追いつくのが大変。いや、だったらアンタークチサイトがラッセルした後を歩け。芋虫みたいに動くのが面白けどw
それにしてもアンタークチサイトは気温が下がって結晶するから冬に行動すると言うのは分かるが、行動エネルギーは他の宝石達と同じ様に光じゃないのか。光のエネルギー変換の効率が違うのか。
辿り着いたのは海岸らしき場所。そこも氷で埋め尽くされている。妙な塔の様なものは微小植物を含んだものらしい。単細胞藻類ですか、そうですか。渦鞭毛藻とか珪藻とかの形かな。
そしてそれは来た。氷が動いて軋む時、その軋みの音が叫び声の様に響き渡るのだ。アンタークチサイトは皆の安眠を妨げるその「声」を抑える為に氷を破壊して行く。やってみろと言われたフォスフォフィライトは、僕には無理だと言うが、アンタークチサイトにやれない事をやらないとやれないままだと言われた。そのせいかフォスフォフィライトもアンタークチサイトを見て練習を始めた。動きは良い。何しろあの高速の脚があるのだから。しかし氷を突くと自分の方にヒビが入った。
アンタークチサイトはフォスフォフィライトより硬度が0.5低いのに何故出来るのだろう。靭性の違いか。
フォスフォフィライトは例の叫び声の他に氷が話すのを聞いた。金剛先生によると氷も結晶したら鉱物だから声に聞こえるのだろうと言う。しかし感情は無いので、それは自分の気持ちの反射だと言う。氷に対する時は気を惑わすなと。
フォスフォフィライトの様子を金剛先生に聞かれたアンタークチサイトは、何とかやろうとしている。でも脚はついて来てもそれ以外はいけないと答えた。
それを聞いたフォスフォフィライト、自分の腕を切り落とそうとしてしまった。いや、何故そんな事を。今はルチルは起きてないし、何より材料があるまい。そして今の腕を失う事は記憶を失う事でもあるんだろう?
何より何故そんな場所でやるか。そのせいで氷につけこまれた。惑いのある心で水辺に居たせいでふらふらと氷に引き寄せられたフォスフォフィライトをアンタークチサイトが発見。何とか引き上げたのだが、フォスフォフィライトの腕が無い。