ガールズ&パンツァー劇場版を海藻警察の視点から見る
既にガルパン劇場版を北海道植生警察の視点からみると言う良記事が一ヶ月前に発表されています。
アニメは描き手が絵を自ら起こさないとならなくて、大抵は動物はそれなりにかかれても植物はおざなりになる事がままあります。割合最近見たアニメでは入学から間もないのに藤棚では藤が満開とか。でもそれは未だ良い方かもしれません。
一方で上記記事からガルパン劇場版は北海道の植生をちゃんと描いた描写になっている様です。この考察は凄いなと思っていました。
先日、某友人からKV-2が大洗ホテルの浜に上陸した時にコンブをぶらさげてるんですねと言う話を聞きました。うっかり気づいて無かったのですがコメンタリーを検索してみたら
『ガルパン』ミリタリー生コメンタリー上映会で判明したこととは? 笑いと驚きの連続だった2時間をレポート
海から出てきたKV-2。その砲塔に乗っている昆布は3Dによる描写。
確かに「昆布」って言ってますね。
普段から「生きてるコンブやワカメは緑じゃないってばさ」とアニメで登場する度に連呼している海藻警察の私としては見返さざるを得ません。
問題の場面です。
あー、これはマズイですね。大洗にコンブは生えてません。
陸上植物は基本的な場面の背景だから綿密に調べたのかもしれませんが、昆布は一場面に登場するだけなので調べなかったんでしょうね。て言うか普通の人は海藻の植生分布を気にしないから。
コンブは種類が沢山ありますが基本的に北海道周辺に生える海藻です。南限は太平洋側では宮城県付近です。従ってそれよりずっと南方の大洗には生えてません。私が実際に採集旅行した時に気が付いたのは、福島県小名浜の漁港に小さいコンブが生えていたのを見たのが最南端です。
コンブは普通に知られている大きな藻体(胞子体)と極めて小さい糸状体(配偶体)の間での異形世代交代をします(参考→https://www.kahaku.go.jp/research/researcher/my_research/botany/kitayama/index.html)。特に配偶体が低温でないと生きていけず、それが南限を決めます。おそらく小名浜漁港で見た小さいコンブは、漁船の船底に北の海で付着したコンブから漁港内で育ったものと思います。実際、神奈川県と長崎県は北海道から胞子体の苗を貰って養殖しているそうです(参考→http://syokubutu-saijiki.blogspot.jp/2015/05/429.html)。
だから描くのならワカメにすれば良かったのです。ワカメなら本州沿岸に広く分布していますので。因みにワカメとコンブでは藻体の形が全く違い、あのKV-2にぶら下がっているのはワカメではなくてコンブになります。
さらにコンブだろうとワカメだろうと海に生えているのを掠って上陸した場合、藻体は緑色ではなく褐色でなくてはなりません。食卓に上がる時は緑色をしてるかもしれないし、陸上の植物は全て基本的に光合成色素が緑なので植物=緑の意識が強いかもしれませんが、光合成色素はクロロフィルa,bだけではありません。ワカメとコンブが属する褐藻綱は主な光合成色素がクロロフィルaとフコキサンチンで、フコキサンチンが茶色を呈します。従って海中では褐色ですが、陸上に上げられてフコキサンチンが分解すると残ったクロロフィルaの色の緑色になります。だから生えていたワカメやコンブなどを引きずって上陸した直後は褐色でないとおかしいのです。
だからガルパン劇場版のKV-2が緑色のコンブをひっさげて上陸した解釈はこれが良いかとw
http://blog.livedoor.jp/achtung0430/lite/archives/47451545/comments/8141740/?p=6
「プラウダ高校がわざわざ生の昆布を持ち込んだという線もあるがw」
「あれは偽装のために方針に結わえておいたんだよ!」(方針→砲身)
「昆布は大洗へのお土産ということですねw」