ジョーカー・ゲーム・第8話
親英派の白幡に統帥綱領が渡ってしまい、そこから英国総領事のアーネスト・グラハムに漏れそうだと言う阿久津中将。英国に漏れては一大事だと言う事で「風機関」を使えと言う命令を発する。
問題の英国総領事のグラハムとチェスをする男。雰囲気からしてD機関の人間だが、ここではテーラー寺島の蒲生としてグラハムのチェス相手をしていた。そこにグラハム夫人のジェーン・グラハムが入って来て門の外からこちらの様子を伺っている不審な男がいると言う。
グラハムと蒲生が見てみると確かにあからさまに怪しい男がいる。蒲生の見立てではあれは憲兵だろうと。何故なら顔が日焼けしていて外回りが多い様だが一方で帽子の影と思われる日焼けしていない部分もある。その帽子を今被っていないと言う事は、帽子を被ると身分が知れると言う事で、そんな帽子を被るのは憲兵だろうと言う事だ。
グラハムは蒲生の見立てをもとに夫人に紹介する。
「日本人のくせになかなかのキレ者」
当時の人種差別感丸出し。
しかし蒲生が出て行ったあとで「馬鹿め。スパイは紳士の仕事だ」「あんな薄汚い奴がスパイであるものか」とも言う。さてここはどう取るべきか。ここを見た瞬間は蒲生がD機関としてグラハムに近づき、阿久津が命令した風機関のスパイが出来が悪くてあんな憲兵を使ったのか?とも思った。でもあとの展開を見るとそうじゃない。あの憲兵はそれらとは別にやって来たらしい。
グラハムは蒲生が帰る時に使用人の張を使って尾行させた。でも蒲生は張とは通じ合っていた。それは張の借金を蒲生が肩代わりしていると言う形で。だから逆にグラハムの情報が蒲生に張から伝わっている。近々緊急に帰国しそうだと言う事も。さらにはもっと張にやらせようとして蒲生は張を揺さぶる。すがりつく張は「何でもするから」と蒲生にすがりつく。蒲生はこの言葉を待っていた。
蒲生の報告ではグラハムは心象としてはクロ。それはああやってチェスの相手をしてグラハムの性向を見ていてもそう考えられる。しかし状況証拠は何もない。誰かに接触したとかの形跡も無い。状況としてはシロなのだ。
蒲生は直接確かめるしかないかと考える。
この辺りからD機関らしくないと感じる様になった。それは張を金で縛った手法から「おや?」と思われたのが実力行使に出るこの場面から今迄と違うなと感じた。
蒲生は張に薬を渡す。睡眠薬で、これで監視の人間を眠らせろと言うものだ。その隙に蒲生が潜入してグラハムの金庫から金を盗み出す。張にはそう言っておく。首尾良く金が手に入ったら張の借金をチャラにしようと言う話で。張としては何故蒲生が張にこんな事をさせるのか、自分がこれをする事にどう言う意味があるのかは一応理由が成り立つ。
躊躇する張に蒲生はイギリス人が阿片で儲けた金を奪うだけだと、それとなくアヘン戦争の傷を刺激する事で張の中で正当性を持たせようとした。
張の手はずでグラハム邸に忍び込み、絵画の後ろにある金庫を開けて中の資料を確認した蒲生だが、それらしい物は見つからない。だが、メモ書きにはあの夫人に贈った日傘の事がわざわざ書かれている。グラハムに見つかりそうな場面で蒲生は脱出。あの最初に気づいた物音の時に来たのは張かな?そろそろグラハムが来そうだと蒲生に告げに。だからグラハムが部屋に来た時に、あの部屋の奥に張が居て、蒲生がもう外に居たんじゃないか。
夫人の日傘が怪しいと睨んだ蒲生は日傘にメッセージが仕込める様になっているのを確認し、日傘自体には特殊インクを仕込んでそれに触った人間の手が分かる様にした。あのコンタクトはきっとそのインクが放つ蛍光を見られる様にするものなのだろう。
これで用済みとなった張。約束の金を払うと言う名目で蒲生が呼び出す。ところがグラハム邸では金がなくなったなどと言う騒動は起きていない。金が無くなっていないとすると蒲生が金を盗んでないと言う事で、それは即ち自分の借金が消えないと言う事になり、一体どうしたんだと張は蒲生に詰め寄る。しかし蒲生は景気よく2万の札束を張に渡した。盗んでもいないのに何故蒲生が2万を自分に寄こすのか、疑問には思ったろうが実際に金が貰えるならと札束を数え始めたところで蒲生が張をぐさり。
おやおや、D機関にはあるまじき手法じゃないか。
蒲生が報告した先は結城ではない。風機関の風戸哲正中佐。
阿久津からの命令を受けた風機関はこれで親英派とグラハムの繋がりを掴み、親英派を黙らせる糸口を成果として得る事になる。風機関の手法はD機関の手法とは全く逆でD機関が民間の地方人を採用して「死ぬな」「殺すな」の下に情報を入手するのに対して風機関は天保銭組を採用して「躊躇なく殺せ」「潔く死ね」の下に情報を入手しようと言う手法だった。
だが蒲生は多分D機関の人間。とするとD機関から風機関に潜入していたのか?
だとするとここまで全ては結城の掌で阿久津を筆頭に踊らされている事になるが。
これは後編が楽しみだね。