オタク業界を目指す中高生は読んで損はないだろう/オタク成金
まず、新書なのだが中身の書きようが新書じゃないので慣れるまで読みづらかった。それから中身もラノベ界の話と言うよりはオタク業界であかほりさとるがどう生きてきたかをちょっと自慢をふりかけにしつつ語られる。それも予想を外された点。
それは置いておいて、読み始めたらあかほりさとるは処世術(ちょっと語弊があるが)に長けてるのだなあと。結局のところ、百年に一人の超天才でもない限り一般社会と同様にオタク業界でもそれなりの社会性を持っていなければ成功を収める確率はほとんどなさそうだと言う事だ。まあ当たり前と言えば当たり前なんだが、ついついこの手の趣味はそれとはあまり一致しないところにあるので知らぬうちに勘違いしてしまいそうだ。
そしてあかほりさとるが語るにはエンタメの作品は結局のところ魅力あるキャラが重要であり、キャラが動く世界の仕組みはその次であると。だって「俺はこう言う世界で書こう」としたって、その次が書けないでしょと。つい世界の仕組みにこりたくなるがそれじゃダメだと。でもね、人間は神になりたい魅力にはなかなか抗いがたいものがある。ついつい世界を作ってみたくなる。だからいくつでも世界を作れる人間ならそれはそれで売る事が出来るのではなかろうか。そんな人が滅多にいないだけで。何しろ人付き合いがうまく出来る人間ならそれだけいくつものキャラに出会えるが、世界にはそう何個も出会えないからね。
と、まあこんな感じの内容なので、既に社会人になっている人には娯楽読み切りの扱いで読みたければ読んでみてもいいのではなかろうか。一方、社会をまだまだよく知らないが、オタク業界で生きていきたいと思っている中高生には「オタク業界で生きるにはオタクなだけじゃだめなのよ」と言うのをとっぷりと語ってくれる内容なので一読して損はないと思う。
ところで激しく本の内容からは外れるがこの「オタク成金」を最初のリリース群の一つとして始まった「漫画雑誌から生まれた日本一カンタンな新書」であるところのアフタヌーン新書。まるであかほりさとるがラノベはクラスの40人中の35人に読ませる物なのだと言ってる様な方向だ。だからこの書きぶりか。他社の新書ですら最近は軽すぎて閉口していたが(昔は新書と言えば内容が重いものだった。岩波新書にパラフィンが被っていた時代は)、これだとアフタヌーン新書の他の本は読む気力が起きそうもないなあ。
ついでに表紙がAのデザインだとどうしてもアスキー新書の様な気分になる。
いや、これはめちゃくちゃ個人的な印象だけどね。