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カラヤンとフルトヴェングラー

久しぶりに大変おもしろい新書だったので2日程で読了した。私はあまり音楽家の伝記などの類は読まないので、フルトヴェングラーについては第三帝国時代のナチスとの対立と共存、カラヤンについてはナチス党の党員だった経歴程度しか本人にまつわるエピソードは読んでいなかった。私の子供時代は既にカラヤン・ベルリンが世界を代表する組み合わせだった。そしてフルトヴェングラーを知ったのはもっとちょっと歳が行ってからで、最初は(時代のせいがあって)なんだこの古い録音はと思っていたのが、それがベルリンにおいてカラヤンの前任の指揮者でやはり世界を代表していたと言う程度だった。

だから通史の形でカラヤンとフルトヴェングラーが争うこの本は実におもしろく読めた。そう、状況も登場人物の性格も、人物間の関係も全く異なるが、信長の後継に秀吉が登場して天下をさらっていく、そんな感じの本だった。ほんと、例えが悪いけどw

こんなに仲が悪かったんだね。

聴いている分にはそんな二人の関係などそれこそこちらには関係の無い話で、私はどちらの演奏も好きだ。大学院の頃だったか私は何故フルトヴェングラーの生演奏が聴ける時代に生まれつかなかったのだろうかと悔しい思いをしたものだった。もっとも普通の日本人ならその当時に生まれてもフルトヴェングラーの生演奏など聴ける訳が無かったが。一方でカラヤンはよく来日してくれた。日本も経済成長をしたしカラヤンにとって日本はとても良いマーケットだったから。おかげでカラヤンの方は生演奏が聴けた。あれは凄かった。よくオーケストラが1個の楽器と言う表現があるが本当に1個の楽器だった。日本のオーケストラはどう聴いても何人かの演奏者が構成している集団なのだが、カラヤンが振ったベルリン・フィルは本当に1個の楽器が鳴っている様だった。しかもとてつもない厚みのある音を出す楽器が。

ベルリン・フィルを舞台にした二人の争いの話になると必然的にそこに挟まれたチェリビダッケもこの本の3人目の主役として登場する。最初にも書いたとおり伝記の類は読まないから先の大戦後の一時期にチェリビダッケがベルリン・フィルを振っていたものの何故かフルトヴェングラーの後継がカラヤンだったと言うのが嘗ての私にとっては腑に落ちない話だったが、ああ、そうなんですね。「千秋様」みたいな事をしたのかw

チェリビダッケはレコードを出さない人だったので(これは有名だった)、学生時代に聴いた断片的にしか聴けなかった演奏では全然ぴんと来ない指揮者だった。だが、CDが普及して後海賊版が入手しやすくなり(笑)、晩年の演奏を聴いたらそのイメージは完全に変わった。はっきり言って化けた。もっと正規ルートで録音が出てくるのを望みたい。ただ、正規ルートだと放送用録音しか無いんじゃないだろうか。そうなるとやっぱり音源が海賊版になっちゃうんだよね。

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中川 右介

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